「申請しなければ、科研費は当たらない 」

中部大学理事長・飯吉厚夫氏インタビュー(7)

「申請しなければ、科研費は当たらない 」
飯吉厚夫氏インタビューシリーズ7回目!
研究者にとっての生命線はやはり、科研費を獲得できるか否かにあります。適切な配分や評価方法は判断が分かれるところですが、飯吉先生はとにかく申請をすることを強調されました。


【湯浅】
 例えば、私は企業の経営をしていますけれど、自分が仮に今大学の院生だったら、将来研究者になるか、あるいは企業に就職するか考えた場合に、なかなか定職にありつきづらい研究者への道に踏み切る勇気はないんじゃないかと感じます。

1つにはおそらくテニュア制度がしっかりとうまくできていないということ。一応制度としてはあるのですが。任期制が続いていると。
もう一方では、やはり科研費がちゃんと分配されていないんじゃないかなという問題があるのではないかと。

【飯吉】 科研費の分配というのは難しいですよね。基礎研究の評価というのは難しいんですよね。とんでもない結果が出てくるということはありますからね。だから、慎重でなければいけない。私は少なくとも審査員は一人の人があまり長くやらないほうがいいと思います。

前の審査員はあまり評価していなかったけど、今度の審査員は評価してくれるかもしれない、ってこともありますよね。だから、難しいんですよ、評価っていうのは。

【湯浅】 そうですね。

【飯吉】 その中からいいのが出てくるんだと思うんです。何でもかんでも、100%いい成果なんて考えられないですからね。研究なんてやる本人も初めてのことをやるわけで、わけわからずやっている人もいるんだろうから。

【湯浅】 確かに。

【飯吉】 とにかく、科研費はなきゃだめなんですよ。

【湯浅】 そうですよね。

【飯吉】 科研費には基盤研究S、A、B、C。それから、新学術領域研究とか、研究の進展に合せたタイプがある。

あれは非常に大事だと思いますね。野依さんとかノーベル賞をもらった人もみんな、最初は科研費からスタートしていますからね。だから、そういう意味では非常に大事だと思います。

【湯浅】 大事ですよね。今回の登壇者の一人である宮川先生はやはり地方大学で研究をされていて、研究費がぜんぜんもらえない研究者もいるとおっしゃっていまして。単純な素人の疑問として、「じゃ、研究費が出なかったら研究者は何をするんですか?」とお尋ねしたら、「いや、何もしていないですよ。日本の問題は、何もしなくても研究者が務まってしまうところなんだ」と。

【飯吉】 やっぱり、研究費が足りないならないなりに、何かいろいろアイデアを考えるとか、何かやらないといけないんじゃないでしょうかね。科研費はだいたい採択率というのが20%ぐらいでしょう。

【湯浅】 そうですね。25%とか、それぐらいだと思います。

【飯吉】 つまり、申請書を出せば25%は大体当たるんですよね。だから、各大学がもっと出せばいいんですよ。ところが地方大学になると、もう出しても当たらないと思っている。25%が20%になるかもしれないけど、当たるんですよ。だから私、中部大学に来たときに、研究者が全然科研費申請を出していないので、全員に出すように言いまして(笑)。

【湯浅】 なるほど。たしかに当たらないかもしれないけれど、出さなければ当たりませんからね。

【飯吉】 その結果、今は科研費の獲得額は私学で39番になっているんですね。

【湯浅】 すごいですよ、それは。大学の先生方も研究費がもらえれば当然、研究をやるでしょうし、大学にとっても3割分は運営費として大学に入る。

【飯吉】 ええ、入ってきますからね。

【湯浅】 大学にとっても助かりますよね。

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