「誰もが正論を語る中で、立場を超えて問題をどう解決するかが今後の議論の焦点である」
熊本大学、谷口功学長のシンポジウム後インタビュー
- インタビュー日本の研究ファンディングを考える日本語記事
- April 27, 2014
「何が問題なのかを明確にした国民的な議論をしなければ、将来展望は拓かれないと思います。」
2013年に開催したScience Talksシンポジウム。地域(地方)大学の中でも工夫をこらし、高い研究力を維持する熊本大学学長の谷口功氏はこう語ります。
「今の日本の研究環境の何が問題なのか?を語る議論はもう聞き飽きた」という方も多くいるでしょう。私たちScience Talksも、そう思います。今語るべきは、数ある問題の中から「何を優先して」解決すべきなのか、「どうやって」「だれが」解決すべきなのか。具体的なアイディアを実現するための議論とは?
このシリーズでは「勝手に第5期科学技術基本計画みんなで作っちゃいました!」の第1弾イベント、サイエンストークス・バー~第5期科学技術基本計画についてもっと知ろう、もっと語ろう~に向けて、今までにサイエンストークスで出てきた第5期に盛り込んでほしい皆さんからのアイディア、今掲示板とTwitterで募集中のアイディアを紹介していきます。
熊本大学学長、谷口功氏の2013年シンポジウム後インタビューです。
谷口氏のシンポジウムでのプレゼンは動画でご覧いただけます。
- Science Talksシンポジウムの「研究費」議論の良かった点、課題はどこでしょうか?
谷口 「いろいろな方の意見が聞けてよかったです。しかし、論点がもう少し整理されないと、根本的な考え方に踏み込んで議論するのかどうか不明であった為、行き違いになることも多いと感じました。
大学等の研究者サイドから見れば、研究費等の資金の支援があれば、研究論文や成果が出てくるということは事実であり正しい。多くの研究者が資金の困っているのも真実です。一方で、我が国の現実の財政状況から、平均的な支援は難しいということも真実で正しいのです。これをどのように解決するのかが今後の課題でしょう。
研究者は我が国の現状を考え、新しい産業に結びつく研究を進めるべきではないか、ということも正論であり、また、新しい技術を生み出すには、幅広い裾野のすぐに成果のでない自由な研究も必要である、これもまた正論です。そのバランスをどのようにとるのか、我が国の現状と将来を考えてどのようにするのかが問われているのが今なのです。
すなわち、大学などの研究者の実情の問題と我が国の社会状勢をどのようにマッチングさせるのかが、それをどのように設計するのが最適なのか、その辺の議論が課題であリ、もっと議論が必要です。それぞれの立場からの話はそれとして、今日の課題の解決策を探ることが必要です。」
- 次回に残した課題は何でしょうか?
谷口 「我が国の研究のあり方、考え方の根本についても議論が必要でしょう。上の質問に対する回答にも記載したことがらを、もっと議論できれば良かったと思っています。分野や取り組んでおられる研究者によっても異なる議論になりますが、何が問題なのかを明確にした国民的な議論をしなければ、将来展望は拓かれないと思います。」
- 今回は参加者テーブルからも様々なアイディアが発表されました。
谷口 「いろいろなアイデアが出ましたが、そのほとんどは現在でもできることが多く、特別なことではありません。我が国の研究に対する考え方について、きちんとした提言が出せるような議論になれば良いと思います。
研究者の勝手な考え方と財政を担う者との調整がいかに出来るのか、いかにすべきなのかの議論が必要です。研究支援者の役割についても議論に出ましたが、その人材の養成、特にレベルの高いコーデイネーター等の養成が必要です。どれだけ手当てするかは別にして、基盤的な研究費と競争的な研究費のバランスも必要ですね。
その意味で、研究者のランク分け(反対が出るでしょうが)も必要かと思います。役割文案がある程度必要でしょう。その中で我が国の研究レベルの全体的な向上も必要です。
- なにかさらに伝えたいメッセージはありますか?
谷口 「我が国の大学等の役割をどう考えるかを含めて、国家的な課題で緊急を要する場合には、やはり研究者を一時的に集めて集中的な研究で対応することも必要ではないかと思っています。
また、今日の社会において、大学や研究者の事情はそれはそれとして、「研究とは何か」について、研究者の役割は何かについて、もっと根本的な議論が必要です。そして、何かのミッションを担える研究者は実際にどれくらい存在するのかを含めた議論も必要ですね。」
- 今年のサイエンストークスに期待することは何でしょうか?
谷口 「議論をしただけで終わることのない、実行や効果を伴うものになるとよいと思います。あちこちで同じような議論がなされていますが、一向に解決への道筋等が見いだされていないのが現状に見えますので。今回行われた内容は、それはそれで良かったとは思っています。」
- サイエンストークスはこれからどのような場になっていけばよいでしょうか?
谷口 「この議論が、国民的なものになっていき、科学技術の未来が見えてくるようなものになっていくと良いと思います。若い研究者の方々の悩みや意見がもっと出てくるのも良いかもしれません。単なる甘えの意見ではなく、未来の為に何をするのか何が出来るのか等について話が出れば良いのではないかと思います。」
「単なる甘えの議論ではない、未来のための議論」は、具体的に大学や研究者のみなさんが日々感じている問題を明確化して、解決のための次のステップを立場を超えたステークホルダーがみんなで本気で考えることでしかできないのではないでしょうか。
「研究費がもっとあれば、良い研究の数も増える。」
↔「でも、今の財政状況で研究費を平均的にばら撒くことは難しい」
「日本経済を支えるためには産業に結びつく研究を支援すべき」
↔「でも、産業に結びつく研究をするためには自由な基礎研究の支援も必要」
立場によって対立する意見のすべてが正論であり、真実であり、正しい中で、今私たちが考えるべきは、「で、どうするの?」の部分。
重点化とバラマキ、基礎と応用の配分のベストなバランスとはなにか?を立場を超えて議論して、具体的なアイディアをサイエンストークス「勝手に第5期科学技術基本計画みんなで作っちゃいました!」で政府に提言できれば最高です。
あなたは、その「ベストバランス」ってどこにあると思いますか?
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