CSTIの原山議員に「サイエンストークス版提案書」をお届けしてきました3
- お知らせ勝手に『第5期科学技術基本計画』日本語記事
- February 15, 2015
2月4日にリリースした「サイエンストークス版 第5期科学技術基本計画への提案」。総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)で第5期科学技術基本計画の検討のとりまとめをされている常勤議員の原山優子先生にお届けするため、2月12日木曜日、委員の小山田和仁さんと湯浅誠さんが霞ヶ関にある内閣府を訪ねました。原山優子先生は、今回の「勝手に第5期」企画の立ち上げから個人的にご相談を受けてくださっていて、サイエンストークスの5月のトークイベント、10月のオープンフォーラムにもゲストとしてお越しいただいています。
原山優子先生インタビュー≫
最近、国会議事堂の近くにお引っ越しされた内閣府。以前のビルは耐震のための立て替えが行われることになり、より国会に近い新しいビルに移動していました。立地的には少しわかりにくいですが、建物は以前と比べてピカピカです。受付を通って、CSTIの一角にある原山さんのオフィスをお尋ねしました。
サイエンストークス版の提案書を揉むために開催した2014年のオープンフォーラムでも、個人としてご参加いただいて刺激的なコメントやご意見、アイディアを語っていただいた原山さん。サイエンストークスの「勝手に第5期」プロジェクトを通じてまとまった提案書を見ていただき、全体的なご意見を伺いました。
聞けなかった現場の声が詰まった「勝手に第5期」提案書
湯浅さん「これまでは科学技術基本計画の検討というと、専門の委員会の先生方が有識者の方々を呼ばれて、相談して決められているのが通常だったと思います。今回のサイエンストークスの試みは、有志個人が現場の研究者・当事者と一緒にアイディアを出しあって、頼まれてもいないのに勝手に提案書にして提出してしまうという活動をしているわけですが、原山先生はどんな風にとらえていらっしゃいますか?そして、この提案書はどんな形で活用していただけそうですか?」
原山さん「2月19日に行われる第3回基本専門調査会では人材がテーマ。研究者や研究者以外の人材、基礎研究の話が大きな議題です。そのときにこういう提案があがっているということを知った上で議論した方が実りがあります。研究の当事者の人は普通、会議の場に出てこないですから。委員の方々のかなりの割合は研究者の方々なのですが、当然シニアの方が多い。これからの研究を担う若手の人たちがどういう環境に置かれていて、どういうことに苦労して、何に期待感を持っているか、その生の声は聞きたくても聞こえてこない重要なパーツです。もう一つ声を聞くのが難しいのが社会、一般国民の声。もちろんこの提案書がすべてではないことは理解した上で、研究者の声をまとめてくださっている点ではありがたいと思います。
第4期のときには計画が終わった後に東北の大震災が起きたために、途中で計画の見直しが行われるという特殊なケースでした。今回、第5期計画を作るにあたっては、落ち着いた形でできる限り意味のあるやり方で作りたいと思っています。
そのため、計画の検討にあたっては有識者と外部の専門家が一緒に議論して作りあげていきます。専門調査会というものを開催して、フォーマルなものから勉強会という形までありますが、関連する団体や組織をお呼びして、彼らが求める科学技術のあり方をヒアリングして議論していきます。サイエンストークスのこの提案書は、主たる現場の研究者の意見をまとめたものであるという点で、これまでと違う意見が出ていて面白いと思いますね」
湯浅さん「現場の若手当事者の意見として、検討の材料にしていただくことはできそうでしょうか?」
原山さん「当初、サイエンストークスのみなさんがこの企画を仕掛けたいという話をしにいらっしゃった時には、個人的には面白いと思ったけれども、他の有識者議員のみなさんがどう感じるのかはわからなかったけれども、実際にみなさんに確認したらウェルカムです、期待しています、という反応でした。みなさんの活動の結果がどうなっているのかをウォッチしている人たちもいます。具体的に提案書として出てきたものなので、個人的には何らかの形でフィードバックを出し合って相互にインタラクションできればいいと思っています」
主張の押しつけではない、事例で語るユニークさ
湯浅さん「今回の企画全体で、提案書の作りからイベントの運営まで、我々にとっても試行錯誤の連続だったんですが、原山さんはこの活動やリリースした提案書を見てどのような感想をお持ちですか?」
原山さん「このサイエンストークスの提案書で面白いと思うのは、実践事例がいっぱい掲載されていること。事例の中には生の感触っていうものが出てきますね。いつも考えているんですが、政策を作ってはじめから日本全国でこれをやりましょうと言うと、大抵はうまく行かないんですよね。常に現場で実験的な試みをして、成功と失敗を積み上げていかなければいけない。例えば海外で成功している事例なんかだと、日本にどう持ってくるかは課題です。海外事例だからだめだというのじゃなくて、工夫しながら日本にあうものを取り入れてみる。ここに掲載されているのは議論した上で持ち寄った事例で、知恵の固まりだと思います。凝縮していてとても面白いと思う」
湯浅さん「10月のオープンフォーラムでは参加者が車座になって、提案書のドラフトを見て追加の提案と事例を付け足し合うという目的で、フィッシュボールというブレストの手法を使いましたが、参加してみていかがでしたか?」
原山さん「やり方自体が有意義でしたね。試行錯誤的なところもかなりありましたね。参加している人たちも議論の作法がわからずに入って最初は戸惑って…(笑)。それもいいところだったと思います。同じような形の議論をしていたら同じようなアイディアしか出てこない。アイディア・ファクトリー的な意味では有意義だった。出てきたアイディアをどういう形で意味付けして提案にまとめるか、その作業はかなり大変だったでしょう?」
湯浅さん「それはもう、大変でしたね(笑)」
原山さん「この提案書のいいところは、必ずしも主張の押しつけや、国はこうあるべきですというメッセージではなくて、今研究のここが問題であると語りながら、『現場にいる自分たちが変わらなければいけない。そのために国家というアクターに何がサポートできるか?』という議論をしているところがこれまでと違います。通常、『国が悪い』『こうすべきだ』と言いながら、課題の当事者である自分たちは傍観者的になっている場合って多いんだけれども、この提案書には作った人々の主体性が見えるので、今までのやり方と違う。一緒に何かできそうかな?という気がします。
一方で、この提案作成にコミットした研究者は当然研究コミュニティの中のごく一部の人々であることも事実。今はいろいろなメディアがあるから情報発信はできますが、この活動に賛同して、どれぐらいの数の研究者がいっしょにやろうと手を挙げてくれるかが課題ですね。それは政府の責任でもあるわけです。トップダウンで物事を進めても、上層部では方針を認識しても、研究者・教員のレベルで実践できるとは限らない。このサイエンストークスの試みをボトムアップで実践につなげていくには、組織がない中でやらなければいけないから簡単ではないけれど、組織がないからこその強みもあるんじゃないでしょうか。『この指止まれ』で参加してくれる人を増やせるかもしれない。草の根的にどう活動につなげるか。ここまできたからには実りがあってほしいですね」
プロセス自体がプロダクト。人が入ることでバージョンアップする
小山田さん「今お渡しした提案書ががバージョン1.1となっているように、この提案書はソフトウエア的な作り方になっているんです。すでに2日間で1.0から1.1にバージョンアップデートが起きています。果たしてどこまでいくのか、という感じですね(笑)
サイエンストークスの今回の第5期科学技術基本計画への提案書は、作成のプロセス自体がある種のプロダクトであり、プロダクトを作るためにプロセスも変わってきた経緯があります。企画に新しい人を取り込むことで、これまでにできなかった新しいことが自然とできた。今回は編集長として嶋田さんが入ったことで提案の形もかなり変わってきました。新しい仲間を増やしていき、それこそ『この指止まれ!』で新しい人にどんどん関わって、変えていってもらいたい。今はメンバーみんながアフターセブンでボランティアで活動している状態で、関わっている人たちはほんの一部。これからは学会とのコラボなども次々としていきたいですし、実際にやろうという話も出始めています。
提案は、単純な国へのお願いではありません。提案の内容は、ひょっとしたら現状で自分たちでもできるかもしれないし、実はやるためには国の制度自体を変えなければできないものかもしれない。その対話とインタラクションをしていける場としてサイエンストークスが機能していければいいと思っています。計画が絵に描いた餅にならないように、実装されていく、そのストーリーを追うメディアとして」
原山さん「未来の計画を作っている我々はデジタルネイティブ世代じゃないんですね。計画実行の主役は我々じゃない。デジタルネイティブのロジックが主流になったとき、議論にギャップが出てしまう。今からデジタルネイティブの若い人たちを巻き込んでおかないと、計画は時代遅れになってしまう。サイエンストークスの提案書はその年齢層の人たちが作っている。その人たちを組み込むチャンネルを作ってくれたことがありがたいと思っています」
後日、原山議員から委員会・有識者議員の皆様の前で提案書をもとにした勉強会の機会を設けてくださるというご連絡をいただきました。何かを伝えたければ、使えるチャンネルは実はたくさんある、と以前にも語られていた原山議員。サイエンストークスが次に目指すのは、思いついちゃった良いことを今度は勝手にやってみちゃう場になること。今は離れている政府と現場が、どう関わり共創できるかをさらに模索します。
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