2019年に注目を集めた、5つの世界の大学発イニシアティブ
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- February 13, 2020
国内外における大学の評価は、研究活動やアカデミアにおける成果と密接な関係にあります。大学の評価を決定する主な要因は、研究成果が実社会にもたらすインパクトにあると言えるでしょう。
そこで今回は、2019年に注目を集めた、世界各国の大学による5つのプロジェクトをご紹介します!
1. 王立音楽大学(The Royal College of Music, RCM)
RCMが取り組んでいるのは、音楽家の健康を取り巻く問題です。RCMが推進するMusical Impact プロジェクトには、合計1,500名以上の音楽家、科学者、医療関係者が携わっています。プロジェクトの調査結果によると、回答者の80%近くが上半身に何らかの痛みを抱えており、ストレスへの対処、睡眠の質、健康管理については予想を下回る結果となりました。この調査結果を受け、インペリアル・カレッジとの共同イニシアティブであるCentre for Performance Science(CPS)は、Healthy Conservatoiresという組織を立ち上げることとなりました。これは、様々なパフォーミングアーツ関係者の健康および心身の幸福をサポートするための国際的なネットワークです。このネットワークでは年に2回の会合を開催しており、パフォーミングアーツ関係者の健康および心身の幸福を支援・推進するメンバー150名以上が活動しています。
関連動画:https://www.youtube.com/watch?v=e3W3Dp-jPv4
2. プリマス大学(University of Plymouth)
プリマス大学は、イングランド南西部コーンウォールに暮らす高齢者の孤独感や幸福度に関するプロジェクトを行っています。これはAmazon Echo Spotを活用したもので、150台が高齢者施設に設置される予定です。Digital Health Championと呼ばれる学生等15~20名が、施設側や入居者のデバイス使用をサポートします。このデバイスは、使用者のニーズや使用環境に応じたカスタマイズが可能ですが、診察の予約や薬の飲み忘れ防止、医師、家族、友人とのビデオ通話に使用されており、入居者の年齢や好みに応じて音楽を流すこともできます。入居者の孤独感を軽減させるだけでなく、より頻繁に家族と連絡を取り合うことができるため、社会保障制度への過度な依存の緩和にも役立つでしょう。
出典:https://www.plymouth.ac.uk/news/smart-speakers-project-to-advance-elderly-care-across-cornwall
3. 国立ソウル大学校(Seoul National University, SNU)
過去10年間、SNUは数多くの特許を出願しており、研究の質には定評があります。ロイターによるアジア太平洋地域における最も革新的な大学リストにおいて1位を獲得したこともあります。SNUの最新研究であるlipid nanotabletは、超小型バイオコンピューター開発に革新をもたらしました。このデバイスの構造は生体細胞の膜と類似しており、ナノ粒子とDNAの働きによって情報が処理されます。
出典:https://www.useoul.edu/research/highlights
4. シンガポール国立大学(National University of Singapore, NUS)
NUSの研究者は、学生の認知機能を高めるAIシステムを開発しています。CURATE.AIと呼ばれるこのプラットフォームは、個人のプロフィールを作成し、それぞれの学習傾向に応じたカスタマイズが可能です。学習プログラムの効果を向上させるのはもちろんのこと、高齢者の認知機能の低下抑制にもつながると言われています。5月、NSUはデユーク大学と共同研究開発に関する協定を結びました。国際保健、公共政策、イノベーション、起業家精神に関する共同研究が進むものと期待されています。
出典:https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-05/nuos-nps052219.php
5. 東京医科歯科大学(Tokyo Medical & Dental University, TMDU)
TMDUの研究者は、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(IBDs)を対象として、幹細胞を用いる再生医療に取り組んでいます。また、TDK 株式会社と共同で、心臓の電気活動の計測および可視化に世界で初めて成功しました。計測に用いられた磁気センサは、主にハードディスクの磁気ヘッドで使われるものです。
出典: http://www.tmd.ac.jp/english/research_activities/Vol-4/features/f_3/index.html