全分野結集型シンポジウム『学問の世界 The Academic World』

全分野結集型シンポジウム『学問の世界 The Academic World』

2018年2月22日(木)全く新しいタイプの学際シンポジウムが、京都大学吉田キャンパスに於いて開催されました。

それが「全分野結集型シンポジウム『学問の世界 The Academic World』」。
科研費分科全79分野の研究者に呼び掛け、一堂に結集してもらうことで、各分野が「何を前提にして」「何を対象とし」「何を目指して研究を行っているのか」、また各分野の研究者が「どんな研究生活を送っているのか」の情報を交換、比較しようという壮大な試みです。

全ての研究者は、『真理』を解き明かすために研究をしている。そのはずです。

ですが、普段の研究は分野ごと、また個々の研究者ごとに細分化され、「隣の分野の○○センセイ」がどんな研究をしているのかよく分からないこともしばしば――小さく区切られた視界からは、見える真理も自ずと全体のごく一部、小さな「かけら」になっているかもしれません。

全ての分野の情報を集め、研究という広い世界の全体像を掴もうとした今回の試み。このページは、その場に結集した各分野の研究者に対して主催者から投げかけられた質問とその回答を「なるべくそのまま」記録として残すことを目的に作りました(各参加者がPC、スマートフォン等を使い、SNSに投稿する形で回答したものです。記録システムのトラブルにより、どなたのご発言か分からず、統計にのみ使用した回答が若干名分ありました)。


全体を見比べるもよし、自分の興味のある分野についてじっくり読むもよし。研究者の生の「ことば」を、どうぞお楽しみください。

研究者への質問リストは ≫こちら
回答ごとの比較グラフは ≫こちら
京都大学にて本シンポジウムのドキュメンタリー動画を制作中! 詳しくは ≫こちら

The Academic World 結集全分野

情報学 情報学基礎 総合理工 ナノ・マイクロ科学
計算基盤 応用物理学
人間情報学 量子ビーム科学
情報学フロンティア 計算科学
環境学 環境解析学 数物系科学 数学
環境創成学 天文学
環境保全学 物理学
総合領域(1) デザイン学 地球惑星科学
生活科学 プラズマ科学
科学教育・教育工学 化学 基礎化学
科学社会学・科学技術史 複合化学
総合領域(2) 文化財科学・博物館学 材料化学
地理学 工学(1) 機械工学
社会・安全システム科学 電気電子工学
総合領域(3) 人間医工学 土木工学
健康・スポーツ科学 工学(2) 建築学
子ども学 材料工学
生体分子化学 プロセス・化学工学
脳科学 総合工学
総合人文社会 地域研究 総合生物 神経科学
ジェンダー 実験動物学
観光学 腫瘍学
人文学(1) 哲学 ゲノム科学
芸術学 生物資源保全学
文学 生物学 生物科学
言語学 基礎生物学
人文学(2) 史学 人類学
人文地理学 農学 生産環境農学
文化人類学 農芸化学
社会科学(1) 法学 森林圏科学
政治学 水圏応用科学
経済学 社会経済農学
経営学 農業工学
社会科学(2) 社会学 動物生命科学
心理学 境界農学(昆虫科学)
教育学 医師薬学(1) 薬学
基礎医学
境界医学
社会医学
医歯薬学(2) 内科系臨床医学
外科系臨床医学
歯学
看護学

※セルがグレーの分野は欠席。リンクが繋がっていない分野は、ご発言が識別できなかったことを意味します。


ビジュアルで見る75分野徹底比較

※各図、グラフはマウスオーバーで詳しい数字を確認でき、散布図では凡例をクリックしていただくと重なって隠れた分野のデータがハイライトで表示されます。

あなたの分野の、論文1本のページ数はどれくらいですか

多くても20ページ以内の分野が大半ですが、「英文誌だと60ページくらいのこともたまにある(科学社会学・科学技術史)」、「すごく頭のいい先生がすごい問題を解いた論文は200ページを越えていた(情報学基礎)」、「とある雑誌の規程では最大300ページとなっていた(文化財科学・博物館学)」など、極端に厚い論文もなくはないようです。その一方で生活科学分野からは、「平均は6ページだが、それを超えると1ページあたり1万円を取られる」という回答も。

史学と文化人類学の2分野では、ページ数ではなく「400字詰め原稿用紙」でそれぞれ「40~80枚(史学)」、「80枚(文化人類学)」となっていました。

あなたの分野の論文の平均的な著者数は何人ですか?

人文系ではほとんどが単著、環境学も多くても5人程度と比較的少なめ。医歯薬学ではプロジェクトにより、かなりばらつくという結果になりました。

平均すれば5~10人程度の場合が多い分野でも、「大プロジェクトだと数十名(生物科学)」「ニュートリノ実験のような大規模プロジェクトだと500人~1000人くらいになる(物理学)」ことも。

日本人は入っていませんが、1990年代には1本の医学論文に900名以上の著者が名を連ね『論文のページ数の100倍を超える著者数の論文』を発表した事に対してイグノーベル賞(文学賞)が贈られたこともあったそうです。

あなたの分野の平均的な研究者が1年間に書く論文数は?

主著者として1~2本、共著も含めれば3~5本、というお答えが大多数でした。「年に1本はきちんとした論文を書けと指導された(芸術学)」「ジャーナル論文1本、国際会議論文2本を目標にするよう、博士課程の頃に指導された(情報学基礎)」など、定期的に書き続けることを良しとする分野もある一方、プロジェクトに時間が掛かったり、他の仕事が増えたりして「2~3年に1本が現実(脳科学)」になってしまう場合も。

忙しいはずなのにあまりに論文数が多い人には、特に貢献していないのに名前だけを掲載して貰う『Gift Author』の疑いもあるそうなので、数が多ければ多いほど良いという訳でもないようです。

複数著者で論文を執筆する際の、著者名の掲載順のルールは?

その他:

  • 単著が多いためルールがあるかどうかわからない(文学、文化人類学)
  • 話し合って決める(環境創成学)
  • ケースバイケース(地球惑星科学)
  • 学会に入っている人が先(地理学)

最も多いのは貢献度順ですが、「権力のある人が最後(土木工学)」「お金を取ってきた人が最後(電気電子工学)」など、研究室や研究チーム内の力関係も少なからず関係しているよう。「教授に相談する(境界医学)」という意見もありました。

ABC順や五十音順では、『A』や『あ』で始まる名前の方が毎回先頭になってしまうため、その分野の掲載ルールを知っていなければ掲載順から貢献度を評価することは難しいということでもあります。

論文と書籍、より高く評価されるのは?

約7割が論文と回答していますが、文学・哲学・政治学・地域研究・ジェンダーなどの人文、社会科学分野では書籍が優勢という結果になりました。「一般に広めることが課題なので書籍(生活科学)」「論文を書かずに本を書いているとさぼっていると思われそう(プラズマ科学)」と正反対のコメントがあったことからも、分野による差が特に顕著だとわかります。


あなたの所属学会の、学会誌の発行頻度は?

その他: 

  • 日本地理学会は年10冊(地理学)
  • 年20~30冊(神経科学)
  • 関連学会が多いため、それぞれ発行頻度が違う(心理学)

口頭発表する際の、発表時間と質問時間は?

数分から1時間近くまで、かなり幅の広い回答となりました。発表時間が数分というところでは、「発表7分、質問3分。短すぎる(境界医学)」「発表5分、質問3分。ほぼ何も言えない(生活科学)」という不満の声もありました。

時間の使い方をめぐっては「質問時間も潰して、持ち時間いっぱいまで話す人が多い。質問時間が残ると、誰も質問しないので空気が悪くなる(情報学基礎)」「質問を避けるために持ち時間いっぱいまで話す人もいる(基礎生物学)」と対照的なコメント。今回のトピックにはなりませんでしたが、発表に対して質問が出るか、その場で議論が行われるかどうかも、分野によってかなり違うのかもしれません。

国際会議のドレスコードは?

約60%でカジュアルが優勢。「裸でなければ何でもいい(社会学)」「そのままリュックをしょってフィールドに行けそうな格好(地理学)」とかなり自由なところも複数ありました。ただし日本人参加者だけに限れば、カジュアルOKな会場でも「日本人だけがネクタイをしている(史学、子ども学など)」「常夏の国での開催でも日本人だけはスーツ(総合工学)」とリラックスしきれない参加者も少なくないようです。

ビジネス寄りの分野からは「会社の人が多くなるとスーツ(プロセス・化学工学)」のように研究者以外の参加者に左右される場合や「大きなプロジェクトのリーダーはスーツ(天文学)」「初めて発表する学生はスーツ(情報フロンティア)」など、どのような立場で参加するかによって変わるという回答もありました。

珍しいところでは「学会がTシャツを配布(ゲノム)」していたり、「民族衣装の参加者がいる(ジェンダー、看護学)」場合もあるようです。

国際会議での発表は、分野内で評価されますか?

その他: 

  • 若手なら評価される(環境保全学、計算科学)
  • 科研費申請のとき、実績として書くことはできる(プロセス・化学工学)

以上の質問を含め、各分野の詳しい回答は ≫こちら からご覧ください。

京都大学:全分野結集型シンポジウム『学問の世界 The Academic World』

Related post

ダークマターの研究者の原動力とは!?宇宙の謎に迫る研究者

ダークマターの研究者の原動力とは!?宇宙の謎に迫る研究者

後編では、先生がどうして宇宙の研究をしようと思ったのか?また、日々どのような思いを持って研究をされているかに迫ります。他の研究者が探すダークマターとは違った視点で、ダークマターの研究を続ける安逹先生。その研究の出会いについても語ってもらっています。
未知の物質 ダークマターを宇宙ではなく身の回りで見つけたい

未知の物質 ダークマターを宇宙ではなく身の回りで見つけたい

この広大な宇宙は多くの謎に包まれています。その未知の存在の1つが『ダークマター』であり、銀河の回転速度を観測した結果などから、その存在のみが証明されています。安逹先生は宇宙でもなく、身近な場所で、そして、加速器すら使わずにダークマターを見ようとしているのです。いったいどのようにしてダークマターを見つけるのでしょうか。ぜひ、その驚くべき手法とアイデアを動画で確認してみてください。
チベットの研究を通して見えてきたもの

チベットの研究を通して見えてきたもの

自分自身のしたいことを貫いて進んできた井内先生だからこそ見える世界、今後、チベットの研究をより多くの方に知っていただく活動にもたくさん力を入れていくそうです。これまで歴史の研究について、そして、チベットのことあまり知らないという人にもぜひとも見ていただきたい内容です。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *