学問の世界 Academic World ―総合領域(2)―

学問の世界 Academic World ―総合領域(2)―

2018年2月22日(木)京都大学にて開催された全分野結集型シンポジウム『学問の世界 The Academic World』。科研費分科全79分野のうち75分野の研究者が結集、お互いの研究について紹介し合い、各分科ごとに細分化された研究では「全体のほんの一部」しか見えなくなっているかもしれない「真理の探究」について語り合いました。
参加された方々のご発言、コメントを、分野別にご紹介します(1分科1~2名)。
≫もくじページに戻る

総合領域(2)

3/75分科、5名

文化財科学・博物館学

1.所属
  • 博物館(国立)/大学(国立)
論文 2.ページ数
  • 複合分野なので、雑誌により違う
  • 人文系だと30ページ前後、サイエンス系だと10~20ページ
  • とある雑誌の規定ではMax300pというところもあった
  • 図版、表、データCDがつく論文もある
3.著者数
  • 人文系だと1人、サイエンス系だと5~10人
  • サイエンス系でも1人の場合もある
4.年間本数(平均)
  • 自分は年3本、時間と仕事量とデータ量による…
  • ファーストなら2本くらい
5.著者名掲載ルール
  • 貢献度→プロジェクトに関わりが深い順→最後にボス
  • 貢献度の順、プロジェクトとの関連頻度順。関わりが低いけど偉い人を最後につける
6.書籍と論文、評価されるのは
  • 人文系は書籍、サイエンス系は査読付きの英語論文
学会 7.おもな所属学会と所属人数
  • 日本文化財科学会:3,000人
8.学会誌の発行頻度
  • 人文系だと年1~2回、サイエンス系は季刊で年4回など
  • 1~4回、機関誌が比率として高い
9.口頭発表時の発表時間と質問時間
  • 発表15分前後、質問3~5分
  • 発表20分、質問10分
  • ポスターだと前説5分、トーク1時間
国際会議 10.意外?な開催場所
  • 世界考古学会議:ヨルダンの死海
  • 温泉地の公民館
11.服装
  • 人文系はスーツが多いけど基本自由
  • かなり自由、だけど懇親会はドレスコードがある
  • 会場によってはドレスコードが決まっている
12.国際会議での発表
  • 評価される
  • 寧ろ国際会議の方が評価が高く、科研費が通りやすい
13.一般的な研究費
  • 科研費や助成金を取れば年間300万
  • プロジェクト次第、個人研究なら300~400万程度。ただし研究助成がなければゼロ…
  • 特任助教で科研費を持って入れば10万

14.他の分野の研究者には意味不明?! な専門用語は?

  • 地山(じやま)
  • えんぴなげ、サンスケ

 
15.仲の良い分野は?

  • 環境学、人類学、史学、地質学、地球化学、植物学など

 
16.仲の悪い分野は?

  • 悪い分野は基本ない。全部仲良し

 
17.中学生に自分の分野を説明するならどう話す?

  • 文化財科学:人間の作った文化に関連するものすべてを考える
  • 文化財科学:ヒトが作ったモノをどう評価していくのかを考える
  • 博物館学:これは宝物! というものを多くの人と共有できるようにする
  • 博物館学:人間の作ったモノや知識をみんなで共有して理解する

 
18.あなたの分野の目指すところは? キャッチフレーズ、うたい文句など

  • 正しく歴史を理解する
  • 学会では文化財科学は「文化財に関する自然科学・人文科学両分野の学際的研究の発達および普及を図ること」らしいですが、人間の作った文化ともの(過去~現在)を未来に伝えていくこと

 
19.研究していて面白い! と思う瞬間は?

  • 分からないことが出てきたとき
  • ミッシングリンクの1つを埋められたと思えたとき
  • 予想外の発見、同じデータ・結果の違う分野の見方を知ったとき
  • 天皇陵に調査で入れたとき

 
20.これはすごい! いい論文だ! と思うのはどんな論文?

  • これまでの定説が変わるような発見がきちんとデータで証明された論文

 
21.この人はすごい! と思うのはどんな研究者?

  • 先行研究に左右されない(ただしそれらの蓄積をきちんと理解している)人

 
22.これはクソ研究だわ…と思うのはどんな研究?

23.ここが変だよ! 私の分野

  • 同じ業界のみんな「それが普通」と思っていること

 
24.それを聞いたらおしまいよ…という禁句は何?

  • 「出ていないからそれは存在しない」
  • 目で見えないものは信じない(顕微鏡などを使うため)

 
25.分野内で暗黙的に前提になっていること、そこを疑うと分野が成り立たなくなることは?

  • 人間がつくったものと自然にできたものとの区別
  • 博物館学:今のものを未来に伝えていくこと

 
26.より良い社会、より良い人生を分野の言葉で語るなら?

  • 戦争のない社会
  • 人類の歴史上、争いのない期間はそれなりに長い。戦争のない世の中にできるように過去から学ぶ

 
27.記号・言語・数式などで世界の本質は記述できる?

  • 本質はない
  • 世界は人の数、地域の数だけある
  • 記述する側にとっての世界で合って、記述される側はその世界ではない

 
28.今日の感想を一言

  • 面白かったです。いろいろな分野の名言が多発しているので、ぜひ後でじっくり全部読めるようにしてください
  • 楽しい試みでした。これだけ色々な分野の方の簡潔な言葉を一気に知る機会ができて楽しかった一気に知る機会ができて楽しかった。 とりあえず、今日の内容を全部読みたい

 

地理学

1.所属
  • 大学(国立)
論文 2.ページ数
  • 10~28ページくらい。幅があります
3.著者数
  • 平均と言われても…1人のことも10人のこともある
4.年間本数(平均)
  • 普通は2本くらい
  • 変人は10本
5.著者名掲載ルール
  • 学会員が最初
6.書籍と論文、評価されるのは
  • 書籍が研究所なら論文より高く評価される
  • 社会からの評価は普及書の方が高いと思う
学会 7.おもな所属学会と所属人数
  • 日本地理学会:3,000人くらい
  • ほかに人文地理学会、経済地理学会、地理教育学会、東北地理学会、奈良地理学会…たくさんありすぎ
8.学会誌の発行頻度
  • 月1回のところも、年1回のところもある
9.口頭発表時の発表時間と質問時間
  • 発表・質疑合計で19分
国際会議 10.意外?な開催場所
  • 北海道の、あと3ヶ月で廃止される大学
11.服装
  • 普段着。そのままリュックをしょってどこかへ…
  • たまにTシャツでそのままビーチへ
12.国際会議での発表
  • 発表は評価されるが、そこでのペーパーはノーカウント
13.一般的な研究費
  • 大学から出る研究費だけでやっている人は20万円台
  • 結構自腹で好き勝手やっている人も多い

14.他の分野の研究者には意味不明?! な専門用語は?

  • 日本地球惑星科学連合

 
15.仲の良い分野は?

  • みんな仲良し。地理学だけでは何もできない
  • 地理学と教育関係は結構仲良し。科目を持っているのは大きい

 
16.仲の悪い分野は?

  • 地質学の人とは微妙。お前、地球表面しか見ていないだろと言われると…

 
17.中学生に自分の分野を説明するならどう話す?

  • あそこに行ったら何がある? それはなぜ?
  • 人類は地球上でどう暮らしているか、地球表面を人類はどう使っているかを見ています

 
18.あなたの分野の目指すところは? キャッチフレーズ、うたい文句など

  • 地球上の空間を使って、私たちはどう暮らしていこうか?
  • 人は地球表面をどう使っているのか
  • 与えられた自然の中で、人はどう生きてきたのかを明らかにする
  • 自然は人にとって災害になることもあるけど、恵みになっている部分も多い。どう折り合いをつけて生きていくか
  • 地域多様性の解明

 
19.研究していて面白い! と思う瞬間は?

  • 出会い
  • きれいな地図が描けたとき
  • 関わった地域の方々に「ありがとう」「私もやりたい」と言って貰えたとき

 
20.これはすごい! いい論文だ! と思うのはどんな論文?

  • 載っている地図がきれいな論文
  • 流れがよくわかる論文
  • 地域の見方が変わったり、地域の現象が巧く説明できている論文
  • 地域の姿が読者の頭の中に描き出される論文
  • 地域に再現性があったら、面白くない地域が増殖すると思う。実際そうなってきているけど

 
21.この人はすごい! と思うのはどんな研究者?

  • コツコツと地域に深く関わっている研究者
  • 酒と雑学に強い研究者

 
22.これはクソ研究だわ…と思うのはどんな研究?

  • 調べてみましたーで終わる研究
  • 自分の論文しか引用していない研究
  • 結果ありきの研究

 
23.ここが変だよ! 私の分野

  • やたらと悉皆調査(全数調査)にこだわる。でも、好き

 
24.それを聞いたらおしまいよ…という禁句は何?

  • 「地域なんて見ても意味ない」
  • 「田舎なんてつぶれてしまえ」と言われると悲しい
  • いつか日本列島も消えるでしょ

 
25.分野内で暗黙的に前提になっていること、そこを疑うと分野が成り立たなくなることは?

  • 人は空間の中に生きている
  • 地域差が存在する
  • 自分の暮らしている地域とは違う地域について知ることには意味がある
  • 僕らは地球で生きている

 
26.より良い社会、より良い人生を分野の言葉で語るなら?

  • 地理学からみた「よりよい」は、どれだけ人がその地の自然や文化に即して生きていけるか、変化を活かして変えていけるかだと思う

 
27.記号・言語・数式などで世界の本質は記述できる?

  • 地図で世界を記述することも、私たちは大切にしたい
  • 記号に表彰されることを見てこそ、世界は記述できる

 
28.今日の感想を一言

  • 何かの追求は楽しい

 

社会・安全システム科学

1.所属
  • 大学(国立)/大学(国立)
論文 2.ページ数
  • 10~30ページ
3.著者数
  • 3~5人
4.年間本数(平均)
  • 1~2本
5.著者名掲載ルール
  • 貢献度順
6.書籍と論文、評価されるのは
  • 書籍
  • 論文
学会 7.おもな所属学会と所属人数
  • 地域安全学会:500人くらい
8.学会誌の発行頻度
  • 年に1~3回くらい
  • 学会誌と論文誌は違う。学会誌は記事が主体
9.口頭発表時の発表時間と質問時間
  • 10分くらい
  • 建築は4分
国際会議 10.意外?な開催場所
  • 石垣島
  • 三宅島
11.服装
  • スーツが多い
12.国際会議での発表
  • 評価される
  • わからない。私も知りたい
  • うちの分野はほとんど国内ばかりだから、英語というのに意味がある的な感じ
13.一般的な研究費
  • ピンキリ過ぎる
  • 100万円くらい?

14.他の分野の研究者には意味不明?! な専門用語は?

  • ラーメン構造

 
15.仲の良い分野は?

  • 境界領域なので、元々の分野は建築、土木、医学、心理学、歴史学、地理学などなど

 
16.仲の悪い分野は?

  • 元の分野同士仲が良いとは限らない

 
17.中学生に自分の分野を説明するならどう話す?

  • 社会をより良くする研究
  • 「こんなはずじゃなかった」と言って災害で死ぬことがないようにするにはどうしたらいいかを考えています
  • 工学は、社会の役に立つ学問という位置づけの学問です

 
18.あなたの分野の目指すところは? キャッチフレーズ、うたい文句など

  • より良い社会
  • よく使われるのは安全安心。でも私はこのフレーズはあまり好きじゃない。危ない中で暮らす、許容できるところと許容できないこと、それぞれの人の中で考えたい
  • 死者の軽減!というけど、死ななきゃ良いというものでもない

 
19.研究していて面白い! と思う瞬間は?

  • そういうことか~というのが見えたとき
  • 伝わったと思った瞬間

 
20.これはすごい! いい論文だ! と思うのはどんな論文?

  • これまでの常識をデータで覆したとき

 
21.この人はすごい! と思うのはどんな研究者?

  • 頭だけでなく、心も体も使っている研究者

 
22.これはクソ研究だわ…と思うのはどんな研究?

  • 研究のための研究をしている研究
  • 入力データ(対象)を変えただけで同じフォーマットで何本でも増殖する論文

 
23.ここが変だよ! 私の分野

  • 言っていることと、やっていることが違う研究者が多い

 
24.それを聞いたらおしまいよ…という禁句は何?

  • 「東海地震はいつきますか?」

 
25.分野内で暗黙的に前提になっていること、そこを疑うと分野が成り立たなくなることは?

  • 被害は減らさないといけない
  • 人は死んだらいけない

 
26.より良い社会、より良い人生を分野の言葉で語るなら?

  • 災害が起きてもしんどくならない社会
  • 死ぬときに「まあ、そんなもんかな」と思えたら良い人生

 
27.記号・言語・数式などで世界の本質は記述できる?

  • 現象を表すのか、価値を表すのか?
  • 思わない。限界を知ることも大事

 
28.今日の感想を一言

  • 楽しかったけど、もっと深めたい。書籍化はいいアイデア

 

The Academic World 結集全分野

総合系:情報学環境学・総合領域(1) (2) (3)
人文社会系:総合人文社会・人文学(1) (2)・社会科学(1) (2)
理工系:総合理工数物系科学化学・工学(1) (2)
生物系:総合生物生物学農学・医歯薬学(1) (2)

Related post

ダークマターの研究者の原動力とは!?宇宙の謎に迫る研究者

ダークマターの研究者の原動力とは!?宇宙の謎に迫る研究者

後編では、先生がどうして宇宙の研究をしようと思ったのか?また、日々どのような思いを持って研究をされているかに迫ります。他の研究者が探すダークマターとは違った視点で、ダークマターの研究を続ける安逹先生。その研究の出会いについても語ってもらっています。
未知の物質 ダークマターを宇宙ではなく身の回りで見つけたい

未知の物質 ダークマターを宇宙ではなく身の回りで見つけたい

この広大な宇宙は多くの謎に包まれています。その未知の存在の1つが『ダークマター』であり、銀河の回転速度を観測した結果などから、その存在のみが証明されています。安逹先生は宇宙でもなく、身近な場所で、そして、加速器すら使わずにダークマターを見ようとしているのです。いったいどのようにしてダークマターを見つけるのでしょうか。ぜひ、その驚くべき手法とアイデアを動画で確認してみてください。
チベットの研究を通して見えてきたもの

チベットの研究を通して見えてきたもの

自分自身のしたいことを貫いて進んできた井内先生だからこそ見える世界、今後、チベットの研究をより多くの方に知っていただく活動にもたくさん力を入れていくそうです。これまで歴史の研究について、そして、チベットのことあまり知らないという人にもぜひとも見ていただきたい内容です。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *