「科学の閉鎖性を打ち破り、科学ファンを増やす!」 研究費を民間から集めるアカデミックに特化したクラウドファンディングとは?

エデュケーショナル・デザイン株式会社 代表取締役の柴藤亮介さんインタビュー

「科学の閉鎖性を打ち破り、科学ファンを増やす!」 研究費を民間から集めるアカデミックに特化したクラウドファンディングとは?

今、様々なクラウドファンディングのサイトが立ち上がっていますが、今年4月にアカデミックに特化した研究費を集めるクラウドファウンディングが登場しました。その名も、“研究費獲得のためのクラウドファンディングサイト「academist(アカデミスト)」”。

このサイトの仕掛け人が、エデュケーショナル・デザイン株式会社の代表取締役の柴藤亮介さんです。今回、柴藤さんにacademistを立ち上げたきっかけや、第1回目の成功した研究プロジェクト「テヅルモヅル」の事例などについてインタビューさせていただきました。
academistは、資金を必要としている研究者が、サイトで研究アイデアを投稿し、共感したサポーターより資金を募るという仕組みです。もともとこのサイトを立ち上げたきっかけは、当時非常勤講師をしていた高校の閉鎖性にあると話した柴藤さん。

「研究と高校の非常勤の二足わらじだったのですが、学校って非常に閉鎖的だなと感じていました。若手研究者が高校に来るという機会もないし、かといってインターネットで情報を収集するということもないし、特にどこかから投資を受けるわけでもないという。モノとお金と情報の流れがない!って、とても驚きました。世の中、グローバル化が進んでいて、もう世界規模で色々なものが行き来しているのに…。そこでこの学校の閉鎖性を何とかしたいと思いました」

BeFunky_academist 01 .jpg
そもそもなぜクラウドファンディングという手段を選んだのでしょうか?

「やはり研究者が国民に対して研究そのものを説明する仕組みというのが、日本には今までなかったので、この閉鎖性をクラウドファンディングという手段を用いてなんとかできないかと。これがアカデミストの始まったきっかけですね」。

クラウドファンディングを通じ、一般の人に研究内容を知ってもらい、身近にかんじてもらう。そして、科学をもっとオープンにしていくことを柴藤さんは目標に掲げました。

「(クラウドファンディングという方法を使うと)研究費獲得とアウトリーチが同時にできるということなんですよね。サイエンス・コミュニケーションという活動が最近、流行っていますが、研究者の方は、研究以外に時間を作るのがなかなか難しいですよね。そして、自分の研究費を獲得する目的があれば、研究者も気合いが入るのかなと思い、クラウドファンディングという手段を選びました」。

4月から開始したばかりにも関わらず、研究費を募った初プロジェクトのテヅルモヅルの研究にはたった1ヶ月で予想以上の研究費が集まりました。「テヅルモヅルっていったい何?」と思った方も多いでしょう。

このテヅルモヅルの分類学的な研究をしているのが、京都大学にて研究員をつとめる岡西政典さん。テヅルモヅルとは、ずばり深海生物のこと。聞いたことのないような生物の研究を面白いと感じたのか、81人のサポートを得て、目標額の40万円をはるかに上回る63万円以上の研究費が集まりました。

柴藤さんご自身も、1回目のプロジェクトで想像以上に手ごたえを感じたそう。
「面白かったのが、テヅルモヅルという研究対象に、日本全国のファンがいるんだなというところでした。研究テーマって、ぱっと聞いて、『んっ?』と思っても、おそらくどこかにファンはいるのではないかというのが、僕の感覚です。このようなニッチな層を研究者と結び付けるようなプラットホームにしたいなと思っています。

私自身、ニッチな分野の研究を行っている研究者と市民をつなげて、様々な分野の研究ファンを獲得が可能なプラットフォームになるかもしれないと感じました。」

現在、academistでは、自分の研究を一般の人や社会に発信していきたい、知ってもらいたいという研究者を募集中。柴藤さんにacademistを活用するメリットについて聞きました。

 

BeFunky_academist 05.jpg
「僕がもし研究者だったら、自分の発見した新しい研究成果や、これからやろうと思っていることをいろいろな人に知ってもらいたいという欲求があると思います。もしそういう研究者の方がいらっしゃるのであれば、ぜひacademistを使っていただけると、資金調達以上に研究内容をリーチできるという、強いメリットがあるかと思います。

第1回目では、テヅルモヅルという生物をかなり広い層に知っていただけましたし、研究者の岡西さんにも喜んでいただいて、そういう研究費獲得以外のメリットは非常に強いのかなと思います」。

ちなみに、テヅルモヅルの研究費が目標金額超えこともあり、そのお金を使って出資していただいた人を対象にサイエンス・カフェならぬテヅルモヅル・カフェの開催を企画中とのことです。

オンライン上だけのつながりだけではなく、実際に研究者と支援者が交流できる仕組みが考えられていますが、やはりこんなところから本当のサイエンス・コミュニケーションができるのではないでしょうか。

――柴藤さんの最終的なゴールは研究者が一次情報を発信できるサイトにすること。

「何かが起こったときに研究者がコメントできるようなメディア的な要素も含めたサイトにしていきたいと思っています。そこに集まる人は本当に様々なことに通じていて、かつ、自分の専門性もしっかり発信するその名のとおり「アカデミスト」が集まるようなサイトにしたいと思っています」。

各研究分野に科学ファンを作ったり、もっと科学への国民の支持を得る可能性を秘めたacademist。科学の閉鎖性を打ち破り、科学の循環を良くする大きな手段の1つとなること間違いなしです。
今後の展開に乞うご期待。
(インタビューアー 湯浅誠)

BeFunky_null_8.jpg
柴藤亮介(しばとう りょうすけ)さんのプロフィール:エデュケーショナル・デザイン株式会社の代表取締役。2014年4月に研究費獲得のためのクラウドファンディングのサイト「academist」を設立。首都大学東京大学院 理工学研究科物理学専攻博士後期課程単位取得退学。専門は原子核理論、量子多体物理。
【academist公式サイト】

【サイエンスアゴラ2014】 11/9(日)開催!

~ここがヘンだよニッポンの研究!日本で活躍する外国人研究者、社会で活躍する型破りな博士が大集合~
お申込みはこちらから。
※柴藤さんも登壇者として参加していただきます!

Related post

総合科学技術・イノベーション会議とは?

総合科学技術・イノベーション会議とは?

総合科学技術・イノベーション会議の議員の構成というのは極めて重要です。関連の大臣が入っているので科学技術の政策がいろいろなところで展開され、関連の大臣がみんな入っているということは自ら決めていく。FIRSTは日本が非常に誇るべきシステムです。
日本人の感性と感情にある豊かな言葉をサイエンスで生かすべき

日本人の感性と感情にある豊かな言葉をサイエンスで生かすべき

サイエンス分野では日本語でしか発見できないことがたくさんあります。日本人の感性と感情に豊かな言葉があって、実はその中で大発見がうまれてきている。基本的な考え方として、ここを抑えておかないとどんなに政策提言をしても世の中は変わりません。
好奇心と掘り下げ続ける力こそが研究

好奇心と掘り下げ続ける力こそが研究

リバネスのモットーは『科学技術の発展と地球貢献を実現する』。小中高校生への「出前実験教室」を中心に、幅広い事業を手がけている企業、その設立者であり代表取締役CEOをつとめる丸幸弘氏にインタビューさせて頂きました。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *