男達よ、子育てとの両立を経験してから仕事を語れ

男達よ、子育てとの両立を経験してから仕事を語れ

コラム まことのFACT

今回取材させていただいた名古屋大学の女性研究者のお話を伺って、単身子育てと仕事の両立の大変さ、またそれを理解し、支える社会システムの必要さを痛感しました。

日本社会は高度成長期からの組織体制が未だ根付いており、育児へ積極的に参加してきた父親も少なく、仕事と子育ての両立の大変さを実感できる人はまだまだ少ないと思います。私も自分自身に双子が生まれ深く育児に関わっていなければ、今回の取材で伺った話を身に染みて理解、共感できなかったと思います。

周りの男友達の話を聞いても育児に積極参加している人はそれほど多くなく、育児はほとんど奥さんが担当している家庭が多いのが現実です。夫婦で育児と仕事をお互いに両立し、犠牲を払ったり、周りにサポートを求めたり、迷惑をかけたりすることで、それが社会システムの一部になっていくのではないでしょうか。

例えば、ベビーカーを引いて駅のエレベーターを利用して初めて諸問題に気が付きました。信じられない程遠回りをする必要がある、エレベーターがない駅がある、必要でない人たち利用していて、乗れずに何度も待つ必要があるなど、自分が経験しないとわからない事がたくさんあります。

日本のシステムの土台を作った団塊世代の男性の方々は、今初めて孫の世話でこれらの設備を利用して「あれがダメだ、これがなっていない」と文句を言っているかもしれません。

設備面よりも私がさらに強く感じるのは、周りの子育てに対する理解のなさです。子どもは突然電車で大声を出したり、簡単に泣き止まないので、親は公共の場で肩身の狭い思いをすることがよくあります。

そんな時、周りの人が物凄く嫌な顔をしたり、舌打ちをしたり、またベビーカーを邪魔者扱いされる事もありました。社会がもう少し子育ての大変さを理解し、寛容になることが必要だと思います。

子どもを育てることがどんなに大変か理解をするためには、自分が経験することが一番効果的です。一度自分が経験すれば、同じ状況に置かれている他人の気持ちがわかり、共感したり、提案したり、励ましたりできます。そして同じ悩みや問題を抱える人のサポートに向けた提言もする事が出来ます。なにせ自分自身が大変な思いをしたのですから。

私は現場主義なので、自分が実際に経験してみて問題だなと思えば、それを改善していくし、自分でできない事は本社を巻き込んで改善しています。もちろんできない事もたくさんありますが、子育てはかなりの人が通る道ですし、今の社会システムにおいて共働きは避けては通れないので、本特集を通じて、組織における子育て支援には何が必要なのかを考えてもらえるきっかけを作れたらと思っています。

湯浅誠(ゆあさ・まこと) / カクタス・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役
イギリス留学、インド滞在、会社経営を経てカクタスの代表取締役に就任。プライベートでは双子のパパで、最近子どもの入院をきっかけに社長自ら育休の取得に挑戦。社員のマネジメントでもワークライフバランスが目下の関心事項。

 


雑誌「ScienceTalks」の「研究者のトゥ・ボディ・プロブレムと単身赴任ワンオペ育児」より転載。

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