「知的好奇心」では足りない、「知的解決心」を持て!産業技術総合研究所、西田佳史氏 ~2020年サイエンス・ゲームチェンジャーズ、トークゲストのご紹介~
- サイエンス・ゲームチェンジャーズ日本語記事
- September 1, 2015
子どもの事故はなぜ起きるのか。どうしたら防げるのか——。産業技術総合研究所、デジタルヒューマン研究グループで子どもの事故防止のために工学的アプローチでの研究を含めた多面的な予防活動をされているのが、今回9月7日のトークイベントのゲストの一人、西田佳史氏。「研究者」、あるいは「科学研究」という従来の枠組みを超えて、社会に存在する「本物の問題」を解決することの重要性を訴えています。
[aside type=”normal”] 西田佳史 氏
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人工知能研究センター 首席研究員
1998年東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了。国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人工知能研究センター、首席研究員。デジタルヒューマン研究グループにて、子どもの事故防止に関する工学的アプローチによる実践的研究に従事。人間の日常生活行動の観察技術とモデリング技術、傷害予防工学、キッズデザインの研究など、病院や企業と連携しながら、子どもの安全を守るためのデータ提供、研究、情報発信、製品開発など様々な活動に携わっている。
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「工学研究には他の研究分野と違い、”ファーム”や”フィールド’が本来存在しない。ならば社会そのものをフィールドにしてしまえばいいんだと考えました」という西田氏。「工学部の研究者は企業と繋がってさえいれば社会とつながりを持っていると錯覚しがち。本当の意味で社会と接点を持った研究をし、論文を書くために作りだされた問題ではなく、社会に存在する本物の問題を扱うことが大切です」と語られました。子育てをきっかけに子どもの事故防止に関心を持った西田氏は、今や病院や企業、メディアなど様々な事故に関する社会のステークホルダーと連携し、データ収集システム作りから研究成果の共有、メディアへの周知、そして製品開発にいたるまで様々な活動に携わられています。
「社会を変えるストーリー」を作ることが大切だと西田氏は語ります。「そのためには、ここは自分のテリトリーじゃない、なんて考えないでやるんですね」データや情報基盤がないとしたら、その土台を作ることから初める。広報活動にも積極的に関わる。コミュニティを作る。問題を解決するためにありとあらゆる手段を使い、自分の立場にこだわらないマルチな活動のされ方は、一人の研究者がダイレクターとして社会にこれだけのインパクトを与えられることを示すロールモデルとして多くの人の参考になるはず。
社会に役に立つ研究をやっていると、アカデミアでは冷ややかな目で見られることもあるという西田氏。「時々、研究者としての知的好奇心はないのか?なんて聞かれるんだけど、知的好奇心じゃなく、「知的解決心」。こっちのほうが高尚なんですよ」と語っていたのが印象的でした。つきないお話の続きはイベントで、お楽しみに。
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