科学をもっと身近に感じてもらうための取り組み
【吉澤剛氏にインタビュー】市民や企業をまきこんで、科学をもっとおもしろくさせよう!
- インタビュー日本語記事
- August 8, 2014
大阪大学大学院准教授の吉澤剛さんにインタビュー!
「政策のための科学」に関わり、政策デザインワークショップを主催する吉澤さん。テクノロジーアセスメント、知識政策がご専門で、大阪大学の「医の倫理と公共政策学」にて准教授をつとめられる傍ら、2007年よりNPO市民科学研究室の理事もされています。
科学にもっと市民や企業が参加し、もっと面白くするための様々なアイディアや実践を語っていただきました。
吉澤剛/GO YOSHIZAWA
大阪大学大学院医学研究科 准教授
<プロフィール>
慶應義塾大学理工学部物理学科卒業後、東京大学大学院(科学史)修了。民間シンクタンクに2年半勤務した後、2002年よりイギリスサセックス大学にて科学技術政策を研究。2008年にPhDを取得し、東京大学公共政策大学院・科学技術と公共政策研究ユニット(SciTePP)に加わる。2011年より現職。専門はテクノロジーアセスメント、知識政策など。
第3回 科学をもっと身近に感じてもらうための取り組み
湯浅 市民にも、もっと科学に興味をもってもらって、科学技術基本計画をもとにして科学技術の方針が決められているという認識を高められたらいいなと思います。そして、私はこう言いたい!という意見をどんどん発言できるような環境になっていったらというのが、私たちサイエンストークスの考えているところでもあります。
吉澤 私も参加している、京都大学の加納さんという方がおこなっているプロジェクトではまさにそんなことを行いました。科学に関心のある市民が集まって、科学技術基本計画版を大阪でやってみようということを議論をしました。このときは文科省が打ち出した「夢ビジョン」の一環として行いました。
湯浅 どのようにして興味のある人を集めたり、興味を持つような啓蒙活動をされているのでしょうか?
吉澤 神戸でサイエンスカフェが結構行われているのですが、そういった科学のコミュニケーションネットワークを通じると、科学好きというのはわりと広く、京都、大阪では集められますね。そういった科学に関心のある市民のネットワークがあって、例えば、そのグループに広報活動をおこなうと、フットワークの軽い方たちもけっこういますので、すぐに人を集めることはできますね。
ですが、今のプロジェクトでは、科学が好きな人ばかりが集まっているので、非常に人口的に偏っているところもあるんですね。科学が嫌い、科学に全然関心ないっていう人たちをどう集めるかというのは課題になっています。
そこで1つ試みているのが、対話型パブコメ(パブリックコメント)という仕組みです。いくつかのローカルな都市をターゲットにして、そこの都市の環境計画や、医療計画、街づくり計画などそういったものを企画する中で、「この計画について、どう思いますか?」という意見を聞く作業をしています。ただ、「科学技術はどうですか?」と聞いても、絶対に答えていただけないので。
例えば、街づくりや医療と、科学技術という部分で、「今の医療についてどう思いますか?」とか、「これからの医療計画についてどう思いますか?」という質問を投げかけて、「ではこういった技術が発展したら、どう思いますか?」といった質問を混ぜていきます。やはり科学技術に全く関心のない人はいますが、潜在的に関心のある人は、何かのテーマについて、ご意見が返ってきます。
科学技術と一見、関係ないけれども、色々なところに科学技術が結びついているので、そういったテーマから興味をもって頂き、科学技術的な部分を聞き出したり、関心を持ってもらったりという方法でおこなっています。
湯浅 こういった活動をおこなっている研究者の皆さんは、先ほどおっしゃっていたサインエス・カフェなど市民との接点のある活動を行われていますよね。
吉澤 そうですね、科学を通じてコミュニケーションを取る人と、一方で研究だけに没頭する純粋な科学系研究者の人たちにわかれますので、研究者自身や媒介の人たちが出向くこともあります。
湯浅 地元の新聞社が開催するよう研究者と市民が集まって対話する場所があったらいいなと思いました。ただ、現状では研究者の方の多くは、そういった活動に興味ない方たちも多い気がします。ですので、少しずつ広げられていくのが1番いいのかなと思いますね。
吉澤 京都大学の宮野さんという方がいらっしゃるのですが、彼は学術融合ということで、まさに京大の中で、全く違う分野の研究者を集めて、新しいプロジェクトを立ち上げることを応援されていますよね。
まだ一般には開かれてはいないのですが、いろんな人が集まってきて、その場に新しいものを作ろうという活動を一般の市民の方へ開いて、プレゼンなどを通じて、科学のおもしろさを訴えるということをこれからしてもいいのかなって思います。
湯浅 そうですね、なかなか面白いですね。市民参加や、学術融合もそうですけど、みなさん面白さで人をつなげようとしていますよね。そういうところを、我々もやりたいと思っています。もう少し未来の夢のある話で、楽しい科学について話そう!というような場を作れるといいですね。
吉澤 是非、やっていくべきだと思います!場のデザインが非常に大事なんですよね!
(聞き手 湯浅誠)
続く第4回の記事では、研究者と企業をどのように結ぶかという産学連携についてお話していただきました。(全5回)
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