原山議員へ一問一答 (2)アメリカのNFSのような研究者による研究の司令塔を作る
- インタビュー勝手に『第5期科学技術基本計画』日本語記事
- September 12, 2014
学術業界で話題になっている問題について原山議員に聞きました。
アメリカのNFSのような研究者による研究の司令塔を作る
質問
サイエンストークスのサイトに「アメリカのNSF(アメリカ国立科学財団)のような研究者による研究の司令塔を作る」というアイデアを出されている方がいらっしゃいました。
投稿していただいた方によると、科学関係費の予算をどうやってつけるのか、という判断を議論している方々が議員であったり、コネ付きの有識者であるという体制の中で、研究を最前線でやっている人の中から、1年程度の長期間連れてきて意見を反映させるようなファンディングのシステムができないかという提案ですね。
彼らの研究キャリアがその一定期間政策方面に従事したとしても失われないようなシステムを作ったうえで。このアイディアについてどう思われますか?
原山さんの回答
【日米の研究者をとりまくシステムの違い】
アメリカの場合は、研究者、研究機関、大学の中に自分のすみかがあって研究をしているのだけれど、彼らは一生研究に従事しているわけではありません。
キャリアの中でフレッシュな時期にこそ精力的に研究しないと評価(レピュテーション)が確立されないが、ある程度認められてくると、ある種の社会貢献的な側面も求められ始めます。それは自分の研究者としてのレピュテーションにもある程度付加価値をもたらすことにもなります。
どういう形でもって研究費を配分するとかという、NSFのいわゆる意思決定をする立場の人がいますが、それに何年間かフルタイムかパートタイムでコミットすることが求められます。多くの場合、彼らはサイエンス・コミュニティーに対する奉公というスタンスで活動をしていて、もちろんその後、元の職場に戻ることができる。そういうシステムがアメリカなどでは出来上がってるということですね。
日本の場合、NSFに相当するのがJSPSで、運営費交付金・補助金などを財源として、どういうプログラムを作りこみ、どういう形で配分をしていくか、その審査をどうするか、といった判断をしています。JSPSにはプロパーな職員もいれば外部の有識者もいて、分野ごとに専門家が何人かいて、その中で意思決定、計画の作りこみが行われます。
そういう意味で、「司令塔」という言葉は当てはまらないかもれないけれども、いろいろな審査プロセスの中には研究者が関わっているわけです。だから事務局が全て決めるというわけではなくて、研究者が意見を反映させるというやり方が盛り込まれています。
ただ研究者が本当に何年間かキャリアの中で、JSPSにフルタイムで入っているというケースはすごく稀で、兼業的に自分の時間をこの仕事に割き、同時に研究もしながら関与しているのが現状です。それが日本のシステムなのです。
これを何年間か完全に大学を休職し、JSPSの方に行くべきだと考えたとき、行く人がいれば成り立つかもしれないけれども、現状を見る限り、なかなか切り離されることを歓迎している人は多くないのが現状かな、と思っています。
【色々な立場からみて回るシステムを】
新しい制度を導入するという時には、勿論それまでのやり方を変えたいという流れが根底にあるわけですが、それが本当に機能するものなのか議論しなくてはいけないし、またそれまでのものに比べてどのくらいメリットがあるのかも吟味しなくてはいけない。
大学の研究者は、研究以外にも、色々な体験を重ねることが、研究者としての幅を広げる意味で重要だと思います。その一つに、自分が研究資金を配る方の立場に立つという体験を位置付けることができます。
企業がどういうアプローチで色々なことを考えているかとか、企業では研究をどのようにマネージしているかとか、そういうことを自分が実感するような場というのもあってもいいし、時には企業に入ってもいいかもしれないし、一緒に共同研究をするとか、いろんなやり方あるけれども、違う立場の人たちのことを実感するということはすごく重要だと思ってます。ファンディングエージェンシーの方から見ると、プロパーの人も重要だし、外部の人も重要。またシステムそのものも機能的に回るものでなくてはならない。
日本のイノベーションシステムどうするかっていう議論にも絡んでくる話だと思うんですよ。ここのパーツだけを考えるのではなく、やはり全体像を見ながら、「どういう形のファンディングエージェンシーが望ましいのか?」っていうのを議論しなくてはいけないのかな、と思いますね。
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