原山議員へ一問一答 (4)実証・評価研究にインセンティブを!
- インタビュー勝手に『第5期科学技術基本計画』日本語記事
- September 17, 2014
学術業界で話題になっている問題について原山議員に聞きました。
実証・評価研究にインセンティブを!
質問
サイエンストークスのサイトに投稿されたアイディアに、“実証・評価研究にインセンティブを”という提案があります。大学が研究大学と教育大学という形で分かれつつある中で、研究をおこなっていく場合でも、国立のトップと、そうでないところの格差が今大きくなっています。
地域大学の経営者の方はやはり自分たちが今後生きていくためには、なかなか現在の国家予算を見ていると厳しいという声もあります。本当はもっと実証研究や評価研究というのが重要なはずで、そういうものを中心的におこなっているという大学というのがあって、そこにも何らかのインセンティブをつけることで発表した新しい研究にうしろがついてくるというようなシステムを作ったほうがいいのではないかという意見があります。
原山さんの回答
【大学システムにはレイヤーを】
研究の世界といいますと、本当に最先端で新しい知識をどのように作るかという、世界的な競争に目がいくけれども、それは一部であって、その下に色々なベースがあるわけですよね。
最先端の研究ばかりをおこなっている、ポテンシャルのある大学が数あるわけではありませんし、そういう意味で、大学システムにレイヤーが必要です。必ずしも東京や旧帝大だけが関わっているとは限りません。昔から文科省でも”多様な大学システム”というキーワードは出てくるのだけれども、その言葉に対して実質的な価値が伴ってきませんでした。
上のレイヤーの層だけが良くて、あとはヒエラルキーではそれ以下、という印象があり、だからこそ多様性がなかなか生まれる土壌にはなっていなかったわけですよ。目指すは(ヒエラルキーの)上で、本来全く異なるレイヤーの大学もそこを目指すという現状があり、異なる土俵にいながら、同じ方向を向いて競争するという問題がありました。
どうやって大学の特殊性を出すか、自分の特徴をどうやって表現するかというときになかなかそれがうまくいかなかったのは、研究と教育を比べた場合にどうしても教育が下に見られてきたからだと思う。あと旧帝大とそれ以外のところとの上下関係も問題です。本来は上下関係の問題じゃないはずなんですよ。それぞれの持ち味があるから、それぞれの存在意義があるはずなのに。
【進化する研究の実証方法】
さっきの話に戻ると、研究の再現性の確認は、研究者自身が担保することが前提ですが、最先端の研究の場合、最先端であるがゆえに実際第3者がすべての条件を揃えて再現することは非常に難しいとの指摘があります。またピアレビューを通った論文であれば良しとする暗黙の了解のようなものもあります。
しかし、ジャーナルにおけるピアレビューとは、当該分野のピアの人が論文をチェックすることですが、論理的に論旨がしっかり立てられているか、これまでの様々な過去の研究の積み重ねを踏まえた上でこの仮説が意味有るものか、それを検証するやり方と整合性がとれているかなど、そういうロジックの側面を見るわけです。要は論文のロジックが通っているかとかに重点が置かれ、研究のデータの中身に入ってチェックするわけではありません。
でも、微妙なグレーゾーンの幅が広がりつつあるし、多分必要になってくるのは、研究に本当に信憑性があるのか、そうじゃないのかっていう話ですよね。いろんな不祥事が起こるたびに、刑罰的な側面で縛りをつけたところで解決にはならない。誰かがチェックしなくちゃいけないけど、それをチェックしたからといって研究業績にならないというのが現状です。そういう意味で、サイエンスのやり方そのものの再考が今つきつけられている課題だと思います。
例えば、非常にひらめきのある研究者が何かアイデアを出し、この指とまれ式に、他の研究者が実証を試みる、その詰めの作業を踏まえて、次のステップ進んで行く。パーツパーツを押さえていく人に支えられて、研究を進めていく、そういうやり方が出てきてもいいわけなんですよ。それを実践する人が出てくることによって、下支えというのかな、それも研究過程の1つのパーツとして位置づけられるようになるかと思います。
それからもう1つ、さっきオープンアクセスの話をしたけれども、オープンデータに関しても同じような問題が出てくると思うんですよ。通常研究者というのは、あまり第3者が使えるように、データをクリーンにしてオープンできる状況では持ってないから、データをオープン化するために相当作業しなくてはいけないいだろうし、またデータを管理する人が必要になってきます。そういう意味で、新たな職種、そういう機能を、研究とい営みの中に埋め込んでいかなくてはいけない。
そうしたらデータ管理の人達というのは、論文を書くときの1つのパートナーとして位置づけられなくてはいけなくなりますよね。この場合、コントリビューターとして、名前を明記することが望ましいわけですが、今のところそのような動きは見えていません。
だからサイエンスのクレディビリティを担保するには、研究の実証のやり方そのものの再考が必要だと思います。「実証・評価研究にインセンティブを」という話に留まることではなくて、その根源にある問題に向き合うことが問われているのだと思います。大学の学部に入って「私は研究者になりたい!」と思った人が修士、博士に進む中で、自分がどのレイヤーを目指すかということを自問自答する機会がでてくると思います。
その中で、やはり支える側に徹するという人が出てきたら、それはそれで価値あることです。でも、その人達をやはりその研究チームのとても必要なパートとして認知していかなくてはならない。向かう方向性としては、向うべき方向と考え、そういう研究のやり方にだんだんシフトしていくことを期待します。単にインセンティブを与えるという話ではないと思います。
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