「“人間力”が新しいものを生み出す 」
中部大学理事長・飯吉厚夫氏インタビュー(10)
- 日本語記事インタビュー日本の研究ファンディングを考える
- September 16, 2013
今回は、偏差値教育が主流となり、若者のクリエイティビティが規制されている教育の現状について厳しくご指摘いただきました。
【飯吉】 早い段階から偏差値教育で絞ってしまうから、新しいことをしよう、ということに対する学生の関心がなくなってしまうのですよ。偏差値教育というのは、本当にクリエイティブな能力をどんどんなくしていきますからね。
【湯浅】 そうですね。
【飯吉】 新しいブレークスルーをすることと、人のやったことを踏襲して知識として持っているということとは、脳の働きが全然違うはず。
【湯浅】 違いますよね。それがあるので先生は、若者がもっと世に出て行く必要があるとおっしゃっているんですね。
【飯吉】 そうなんです。もう若い人からしか出てこないものってあるんですよ。それがクリエイティビティーっていうものかな。だって、スポーツの選手にしたってそうでしょう。20代、今すごいじゃないですか。
【湯浅】 そうですね、確かにすごいですよね。
【飯吉】 やっぱり若いうちじゃないとできないことってあるんだ、だからどうやって「人間力」を植えつけるか、ということに教育者として今一番力を入れています。今、学力が低下したと言われてますが、知力と人間力とが合わさって、本当の意味の学力だと思うんですよね。人間力の中に学力があると、そういう言い方をしてもいいのかもしれない。
人間力がやっぱり今、一番大事なんですよね。知識なんていうのは今みんなコンピューターの中に入っているわけですからね。だからその分を何で補うかと言ったら、人間の感性と言うのかな。そういうものを磨かないと新しいことは全然生まれないんじゃないですかね。
【湯浅】 勉強になります。「人間力」を研究者に当てはめると、やっぱり今おっしゃったようなインスピレーションやアイデアなど、そういった部分が大切ですよね。
【飯吉】 今、学問を教えるということは、専門があまりにも細かくなり過ぎていて、その専門のところを一生懸命一人一人の先生が教えている。それよりも全体の中でその自分の教えていることが学問のどういう位置づけにあるのかというのかということをまず教えて下さいと、うちの大学の先生たちにはお願いしています。
【湯浅】 確かに、自分が全体の中のどこにいるのか、ということはわからないものです。
【飯吉】 わからないでしょう。
【湯浅】 はい。
【飯吉】 専門の枠だけでなく、できるだけ幅広い視野をもって考え、行動することが人間力をつけることだと私は思っています。とかく、すぐ人間を自然科学と人文科学と社会科学とに分けるじゃないですか。だけども、考えているのは脳なんですよ。そこは同じなんですよ。
【湯浅】 そうですね。
【飯吉】 たまたまそれが専門化されて分類されちゃっていて、学生はそれを教えられてそのまま頭に入っているから、「私は理系です」、「私は文系です」と言っているけど、あなたの脳が本当に文系なのか? っていう。脳の研究はまだこれからですよね。脳の国立研究所ができてもいいと思うんですけど(笑)
【湯浅】 なるほど。(笑)
【飯吉】 でも、あまりわかっちゃうと、おもしろくないかもしれない。(笑)
【湯浅】 わからないほうがいいかもしれないですね。