浙江大学国際化の立役者たち

浙江大学国際化の立役者たち

国際化はアプローチであり、ゴールではない

浙江大学の国際性(International Outlook)スコアは、2018年の25から2019年には52と約2倍に上昇した。 どのようにして、わずか1年でこのようなスコア上昇を達成したのだろうか? 戦略と実行は車の両輪のようなものであり、一方だけでは成り立たない。 オフィス・オブ・グローバル・エンゲージメントのディレクター、LI Min先生が、浙江大学の卓越した実行力の秘訣を明かしてくれる。

ー浙江大学はどのようにして、短期間でスコアを伸ばすことができたのでしょうか?

国際化(International Outlook)スコアは、長期的な焦点が求められる3つのシンプルな測定基準で構成されています。その3つとは、外国からの留学生の割合、国際的なスタッフの割合、そして国際的な共同研究の件数です。これらの局面は一夜で改善できるものではありません。私たちが数年かけて行った努力の賜物です。浙江大学の国際化戦略には4つのポイントがあります。具体的には、

(1)教職員の雇用
(2)教育プログラムの国際化
(3)共同研究のためのインセンティブシステム
(4)アウトリーチ

です。

ーどうやって国際的な教職員を採用しているのですか?

ここ数年にわたり、中国は全世界から最高クラスの教職員と学生を惹きつけるために多大な努力を重ねています。私たちの大学も世界中から優れた研究者を募り、魅力的な給与体系、宿泊設備、研究環境、そして研究助成金を提供するために懸命に尽力しています。大学モットーは「真実を探究しイノベーションを追究する」ですが、このモットーに共感する研究者を惹きつけていると思います。さらに、杭州にキャンパスがある点は、私たちの最大の利点の一つですね。自然の美しさと革新的な活力が融合する素晴らしい都市だからです。

ー外国人留学生の数を増加させることは、多くのアジアの大学にとっての課題となっています。秘訣はありますか?

以前は、本学の外国人留学生といえば、中国の言語と文化に興味がある方しかいませんでした。他の研究分野に興味関心がある学生たちが、中国語だけで講義を行う教育プログラムに惹きつけられることはなかったのです。しかし、英語で講義が行われるカリキュラム、特に理系分野を幅広く提供し始めたことで、この課題を克服しました。国際的なキャンパスは、このポリシーをより推進する、最も魅力的なイニシアティブの一つです。

ー研究者がより多くの国際的な共同研究や共著論文に参加するために、大学ができることは何でしょうか?

本学は、中国以外にある約200の大学や施設と提携しています。これらのパートナーシップは、外国からの学生数の増加だけではなく、共同研究の件数も増加させています。教職員に対し、資金を提供することで、より多くの共同研究を実施するように奨励しています。この包括的なサポートシステムによって、研究者は共同研究に積極的に挑戦しており、近年、国際的な共同出版の件数や引用数は急速に増大しています。このことは国際化スコアに影響を与えているはずです。

ーすべての教職員が英語での講義に対応できるとは限りません。この問題にはどう対処していらっしゃいますか?

人事部でいくつかの能力開発研修プログラムを用意しており、その内の New Star Programは、国際的な経験を培うために1年か2年間、海外で過ごすことを希望する教職員をサポートするためのプログラムです。長い目で見れば、このプログラムは大学側にメリットがあります。復帰した教職員には国際的なネットワークとのコネクションができており、国際的な共同研究を実施する有益性を理解できるようになっているからです。これが共同研究を促すうえで役立ちます。

ーグローバル・エンゲージメントオフィスの体系と役割について教えてください。

主に浙江大学のグローバルな戦略と実行を担当します。国際的な卓越性を目指すという目標のもとでアクションプランを考案して実行するため、当該のオフィスやカレッジ、スクールと密接に連携します。部門は6つに分かれ、ゼネラルマネジメント、グローバルパートナーシップ、インターナショナルモビリティ、アウトバンドアドミニストレーション&サービス、香港・マカオ・台湾事務局、グローバルコミュニケーションで構成されています。各部門には副所長が割り当てられ、私に報告するシステムになっています。20名から成るチームで綿密に連携を取り合っています。

ー新規プロジェクトは通常どのように開始されますか?

多くの場合、ゼロベースから始めます。アンケートの実施、他大学のベスト・プラクティスの調査、および本学の強みと弱みの把握をし、将来のパートナー企業や教職員、学生を惹きつけるためにどうやって世界に浙江大学の独自性をアピールできるかを考えます。また私たちの戦略が大学の全体的な目標と一致するように、ヴィジョンを再確認し続けていくことも重要です。

ー浙江大学は国際的なコミュニケーションが非常に活発です。アクティビティの背後にはどのような思想がありますか?

私たちが着手した当時から、世界に向けて英語での情報発信が必要なことは明らかでした。世界の先端を行く大学は国外からもアクセス可能でなければなりませんが、それまで私たちが提供していた情報は、国外に向けてカスタマイズされたものではありませんでした。私たちは旧英語版ウェブサイトを批判的に評価し、自問しました。「私たちのターゲットオーディエンスは誰なのか?」と。それが、2年前に新しいチームを形成し、本学のグローバルコミュニケーションを改善する道のりの始まりでした。国外に向けたソーシャルメディアのアカウントを開設し、提携大学、卒業生、ウェブサイト訪問者、そのほか浙江大学に関心のある方に対し、英語版のニュースレターを送信しました。さらに、本学の最新の研究、教育面における発展、構内ニュースなどの最新情報の提供も行いました。

ー国際化を実行するにあたって人材開発はどのように行っていますか?

驚かれるかもしれませんが、私のチームメンバーには、誰一人としてジャーナリズムまたはメディアコミュニケーションの専門家はいませんでした。民間企業とは異なり、大学はブランディングとプロモーションに不慣れですから、それらをひとまとめに学んでいるところです。他大学から学ぶうえでのベスト・プラクティスは何なのか?浙江大学の強みと弱みは?立ち位置はどこにあるのか?私たちはこれらの中核的な問いかけから始めて、段階的にコミュニケーション戦略を形成しました。しかし、常に学び続けているのが実情です。

ー先生にとって「国際化」とは何ですか?

学術業界の誰に尋ねたとしても、「国際化は必須である」という答えが返ってくるでしょう。ではなぜ必要なのかという理由については、じっくりと考える必要があります。私は、国際化はアプローチであり、ゴールではないと考えます。言語や文化の境界を越えて、グローバルな才能にキャンパスを開放することによって教育と研究の質を向上させることが、実際的なアプローチなのです。私たちの道のりは始まったばかりです。

 

李敏楊 教授
浙江大学オフィス・オブ・グローバル・エンゲージメント(Office of Global Engagement) ディレクターLI Min(李敏)氏は浙江大学オフィス・オブ・グローバル・エンゲージメント(Office of Global Engagement)のディレクターを務め、大学のグローバル戦略とアウトリーチを監督する。国際パートナーとの共同研究の関係発展において主要な任務を担いつつ、国際的コンソーシアムその他への浙江大学の参加などについても目を向けている。LI氏はAPRUのIPAC(国際ポリシー勧告委員会)のメンバーでもある。

 


雑誌「ScienceTalks」の「舞台裏を覗く~中国のアカデミア国際化の大波に乗るプロフェッショナルたち」より転載。

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