北大主任URAが語る、これが北大URAの「肝」だ!

北大主任URAが語る、これが北大URAの「肝」だ!

URAは理事補佐!大学経営マネジメントの実働部隊。一人一人が自分の思い描くURA像を追求でき、その想いが大学を新たな道へ導く!

江端新吾(えばた・しんご)氏

僕の専門は宇宙化学で、隕石の分析や小惑星探査機はやぶさが持ち帰ってきたサンプルを分析するための装置開発などを通じて太陽系の起源を探る研究をやっていました。

研究を進める中で分析機器が研究に与える影響の大きさを強く意識しました。研究者と研究機器・基盤は研究を推進するためになくてはならない両輪なんだと。それからポスドク・助教時代を通して世界最先端の分析機器の開発に携わる中で、有効活用されていない分析機器が大学で大量に抱えられている問題に気づき、これって大学自体の経営戦略がまずいんじゃないかとマネジメントに関心が湧いたんです。

何よりも北海道大学のために、北海道のために、日本のために貢献できる仕事がやりたかった。その時たまたま北大URAの公募が出て、これ面白そうだなと。それがURAの仕事に飛び込んだきっかけです。

URAとして力を入れているのは、機器共有システムの事業化、技術職員技能共有の事業化、それから設備整備の間接経費マネジメントなどです。ざっくり言うと大学ブランド・資産活用。今、国からの予算がどんどん削られている状況で、新しいことをやって大学の存在価値を高め、社会的価値を予算という形に変えてサステイナブルにしっかりと回していくという新たなビジネスモデルが必要です。

それを実現する北海道大学の次世代経営戦略として「グローバルファシリティセンター*」構想を企画し2016年にセンターを設立しました。設立前は、大学が抱える機器と技術職員の方々の価値を大学の資産として重要視している人が当時はほとんどいませんでしたが、これを大学の次世代戦略として位置づけ、北大の1つのランドマークするために、全国に先駆けていろんな取り組みをやってきました。

それが功を奏し全国的に評価されるだけでなく、多くの予算を獲得することができました。その余談で「設備市場」や「試作ソリューション」などといった新規事業を始めることができるようになりワクワクしています。予算を獲得することで終わりではなく、副センター長としてマネジメントも行うことにより北海道大学の価値を上げ、当初のビジョンを実現し成果を上げるべく日々奔走しています。

北大URAの特徴は、全学レベルのシステム改革をミッションにしていることです。一方で、川端理事・副学長は個々のURAが思うURA像を追い求めていけと言っている。URAは新しい職なので、どう発展していくかは未知数です。それぞれのURAが自分が思い描く理想のURA像を自分の仕事を通じて追い求めながらも、一人一人の仕事の成果を最終的に全学レベルのシステム改革に結び付けていく。北大にはその体制がとれているからこそ機能しているのだと思います。北大URAは端的に言うと理事補佐です。

URA育成方法はOJTなのでいつも嵐の中につきおとされるのですが、個々が綿密に企画した構想が大学の経営戦略に結びつくその過程を目の前で見ることができるので、毎日がエキサイティングですね!

江端新吾(えばた・しんご)氏
シニアURA/主任URA
北海道大学にて博士 (理学)を取得。専門は宇宙化学・分析化学。大阪大学、北海道大学にて分析機器の開発に携わる。2013年URA着任。2014年第4回URAシンポジウム・第6回RA研究会合同大会事務局長。2015年より文部科学省科学技術・学術審議会専門委員。2016年グローバルファシリティセンター副センター長。研究基盤戦略や人材育成事業を主に担当。
主な任務
大学機能の自律化システム・ビジネスモデル構築担当するプロジェクト
● オープンファシリティ・システムの事業化
● 技術職員の技能共用の事業化
● 北大ブランド活用方法の検討、など*グローバルファシリティセンター
http://www.gfc.hokudai.ac.jp

 

URAならではのコミュニケーション能力を生かし、大型連携研究プロジェクトを推進。プロジェクトに必要とあらば、部局まで作ってしまう!

田中晋吾(たなか・しんご) 氏

元々は生態学が専門で、昆虫が農薬などの外的な環境変化に適応してどう進化していくかを研究していました。京大で博士号を取った後、当時北大でサステイナビリティ学の研究プロジェクトが立ち上がりつつあって、そこでポスドク研究員としてプロジェクトのコーディネーターを行ったのがURAの仕事に関わるきっかけになりました。

外部資金の獲得や部局の先生方との調整など、文科省から降ってきた大型プロジェクトの動かし方について経験して面白くなりまして。 2012年に北大でURAで職を公募したときに応募しました。

今もっとも熱いのは「北極域研究連携拠点プロジェクト」です。北海道大学の核となるフラッグシップ研究プロジェクトを作り、そこにリソースを集めて全学的に支援していこうという動きから始まったプロジェクトです。北極の研究には自然科学にかぎらず、人文社会学、工学に関わる分野をまたいだ連携が求められる。

外部組織との連携も求められる。大学にはそのレベルの研究を行う受け皿がなかったので、新しい部局を作ることから始めました。国立極地研究所、海洋研究開発機構と連携しあい、文部科学省がやっている北極に関するナショナルプロジェクトと共同利用・共同研究拠点というプロジェクトを取ってきて、動かし始めているところです。

機関、分野それぞれの文化的な違いを乗り越えて理解しあい、問題が生じないように仕事を丸く収めていく。そういったバックグラウンドをサポートしながら、研究者の方々に研究を進めてもらうという仕事です。

北大のユニークなところは、意思決定がトップダウンであることだと思います。だからこそURAの担う役割が大きくなります。そのベースには研究IR、つまり大学の強みの分析が大きな役割を担っています。分析をベースにしてトップが決断を下し、我々がそれに従ってプロジェクト実行に動いていくと、そういう流れです。

我々はトップの意思決定者とすごく関係が近いし、部局長や各担当の科の事務長にも直接アクセスできるので、大きく複雑なプロジェクトをスムーズに進めやすい。ボトムアップだと1年2年かかっちゃうプロジェクトが1週間ぐらいのスピード感でバッとできることもよくあります。

田中晋吾(たなか・しんご) 氏
主任URA
京都大学農学研究科応用生物科学専攻。 博士(農学)。北大サステイナビリティ学教育研究センター在籍中に多国間連携サステイナビリティ学教育プログラムのコーディネーターを務め、現職に至る。北大URAとしてランドマーク研究拠点の構築など、大型研究プロジェクトの立ち上げ・運営を手がける。
主な任務
トップダウン型ランドマーク研究拠点の構築担当するプロジェクト
● 北極域研究連携拠点

 

情報を制するものは大学経営戦略を制す!あらゆるデータを駆使して大学の自画像を描く

岡田直資(おかだ・なおすけ)氏

元々は海洋物理学といって、海の流れを研究してました。もっぱらコンピュータによるシミュレーションが専門で、コンピュータの中に仮想の海を作ってですね、特定の条件で海の流れがどう変わるかを研究していました。北海道大学で学位を取得した後ポスドクとしてつくば市にある国立環境研究所に勤務して、地球温暖化の予測研究プロジェクトに関わってました。

その後で北大の先生に声をかけていただいてグローバルCOEというプログラムの運営補佐業務をやりまして。やってるうちに、この仕事、性に合ってるなと。研究そのものよりも、いかにその研究が円滑に進むようにするかを考える仕事のほうが自分の能力にあっているし、 喜びを感じることに気がつきまして。その頃ちょうど文部科学省がURAを全国の大学に導入しはじめたので、研究者からキャリアチェンジしようと考えて、URAを始めたという次第です。

自分のURAとしての担当は、研究IR(Institutional Research)、つまり研究に関する情報の収集と分析です。手始めに主に論文に関する情報、例えば論文数や引用数を手がけています。将来的には外部資金の獲得、知財の情報などを一元化して把握をし、そこから大学の研究戦略、あるいはもっと広い意味で大学の経営戦略をエビデンスに基づいて導き出すようなしくみを作りたいと思っています。

戦略的な部分では、大学の強みをどう把握していくかが一つの課題です。今大学がすごい競争の時代にあるなかで、北大じゃないとできないことがなんなのか、それをいろいろなデータベース、ツール、独自に収集した情報などを使って把握し、研究拠点形成の立案に使っていく。

もう1つは、大学全体でインパクトのある研究を出していかなければいけない時に、大学の執行部、部局長、あるいは研究者の方々が自分たちの世界での立ち位置について認識を持つこと。分野、部局ごとに細かいデータ分析を行い、部局長の先生方にお届けするということをやっています。

何をするにも、自画像が描けなければどうしようもないだろうと思うんです。それができてなかったのがこれまでの日本の大学だと思います。ただそれがとても難しい。企業を描くのには、売上、利益、株価といったものさしがありますが、大学にはもっと複雑な価値の縦軸横軸があります。

だからその多様な価値に基づいて自画像を描くことを一刻も早くやりたいんです。そのために、研究テーマ、外部資金、業績、知財、こういったものを全部つなぎあわせて、「見える化」したい。そうすることによって、研究者の方々がより研究しやすい環境を作っていくことができると思うんです。

URAは大学を変えてゆくために情報で勝負するんです。情報を活用して、大学の強みを活かすとともに、大学全体の環境を良くしていくことができる。そんな施策が打てる大学になりたいと思っています。

岡田直資(おかだ・なおすけ)氏
主任URA
北海道大学にて博士(地球環境科学)取得。専門は海洋物理学。国立環境研究所で地球温暖化の予測プロジェクトに関わった後に、北海道大学で外部資金プロジェクトの運営補佐に従事。北大URAとして北海道大学の研究力強化のための取組立案や情報分析を担当している。
主な任務
研究IRを活用した大学経営戦略の計画立案担当するプロジェクト
● 研究に関わる全学の情報の一元管理
● 論文情報から大学の強みを分析・共有

 

山﨑淳一郎(やまざき・じゅんいちろう)
URAステーション長

文科省が主導したURA の最初の設計は「研究者の研究時間を確保するため」という目的があった。だからURAは研究者を作家に例えたら、編集者という意味合いがあった。でも大学への期待値が変化し、企業や他組織と連携して大きな研究プロジェクトを進めるというときは一研究者では進められないことが多くある。

総長とか、理事、副学長、あるいはその下のマネジメントレイヤーのところでURAが研究プロデューサーといった立ち位置に立ち、先生方がそのプロジェクトの一部を支えるというような形に変えていくというコンセプトです。今まで研究支援者としての立場だったURAがプロジェクトを回せるようになるには経営的な観点でヴィジョンを語れるようにならなければ人はついてこない。そういった人材に育てていくための、今は過渡期にいると思います。

山﨑淳一郎(やまざき・じゅんいちろう)
東京大学、山形大学、宇都宮大学、弘前大学等で管理職を経験し、山形大学で教授として勤務。その後文科省でリサーチアドミニストレーション(URA)制度の創設に関わる。2016年から北大在籍。

雑誌「ScienceTalks」の「北海道大学URA 大学戦国時代を生き抜く経営人材としてのURA」より転載。

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