国に頼らない、外部研究資金の動員について
財務省の中の人、神田眞人氏との対談(3)
- 日本語記事インタビュー日本の研究ファンディングを考える
- October 3, 2013
【湯浅】 私は研究支援ビジネスを行う立場から大学や研究者の方々の立場からものを考える癖がついていますが、一方で納税者である一市民、民間企業の経営に携わる一経営者として、アカデミックの世界では投資した研究費に対するいわゆるReturn of Investmentの説明責任が確立されていないという点について、おっしゃることは非常によくわかります。
ところで、うちのような外資ベンチャー企業の立場から見ると、大学や研究者が必ずしも国から支給される研究費に依存する必要はなく、アメリカで実際に行われているような研究者自身が企業に企画を持ち込んで投資家を募るといった、外部資金をもっと動員した研究資金を確保が日本でも可能なのかどうかに興味があります。神田さんは外部資金動員というアイディアについてどのようにお考えですか?
【神田】 仰る通り外部資金の導入は大切な論点であり、我が国は大学等が企業から受け入れた研究開発費が最低水準にあり、これも大学世界ランキングで本邦大学が低迷する一因となっています。
実用化研究において、企業からは、研究者が単なる趣味の研究をしている、他方、研究者からは、企業がリスクを取らず貴重なシーヅを育てないといった批判が長らく叫ばれてきました。
【湯浅】 なるほど。
【神田】 財政の限界から研究のパトロネージを産業界等に求める動きはハーナックのカイザー・ヴィルヘルム協会の運動等、昔からありますが、特に米国のブッシュ報告後、安全保障に加え、経済発展への貢献で公的資金投入の論理が組み立てられ、更に、1980年のバイドール等で産学技術移転のあり方が劇的に変化し、研究環境が市場化したにもかかわらず、我が国の学界が対応しきれていないことも悩ましいところです。
【湯浅】 確かに、今の研究のシビアな市場原理に、多くの学会や大学、研究者がついてこれていない感はありますね。
【神田】 我々としても、基礎研究は別途、しっかりした枠組みを工夫しつつ、実用研究については、前段階との谷をブリッジすると共に、リスクマネーをマッチングファンドの形で供給するといった形で構造変革の後押しをしています。研究対象が実需でスクリーニングされる、企業もフリーライドできないといったメリットがあります。
【湯浅】 確実なビジネス・アウトカムを求める企業と、基礎から実用への以降を模索する大学や研究者との間を政府が埋めることで産学連携を後押しするということですね。
神田さん本日は貴重なご意見ありがとうございました。当日の議論にお越しいただけるのを楽しみにしています。
【神田】 ありがとうございました。
※こちらの対談は財務省とかかわりなく一個人としてのご意見をお伺いしています。