「旧帝大学と地方大学の研究環境は雲泥の差」

鈴鹿医療科学大学学長・豊田長康氏インタビュー(6)

「旧帝大学と地方大学の研究環境は雲泥の差」
豊田長康氏インタビューシリーズ6回目!
圧倒的な差がみられる旧帝大と地方大学の研究環境を比較した上で、効果的な資金配分の方法を話し合います。(※以下、敬称略)


【湯浅】
 研究力=研究者の数×研究時間×狭義の研究費×研究者の能力のバランスが最も取れているところというと、実際やはり旧帝国大学ですか。

【豊田】 要するに研究人材の数、研究時間、研究費を多くすれば論文数が多くなるので、必然的に旧帝大が多くなります。やはり旧帝大と地方大学とは研究環境に雲泥の差がありますよね。もちろん、研究者の能力も関係するわけですが、いろいろな事情で地方大学にも旧帝大出身の優秀な研究者がたくさんおられます。たいへん能力のある先生でも、タイミングの問題で、たまたま地方大学にいることも多い。

【湯浅】 うちもエディテージというブランドで全国の大学からの論文校正や翻訳の依頼をいただいたりワークショップを開いていますが、地方の大学にお邪魔すると本当にたくさんの情熱のある研究者の方々にお会いします。

【豊田】 東大で『Nature』クラスに論文を書いておられる有名な内科の先生は、ほとんど毎日朝から晩まで研究をやっておられるわけですよ。診療のデューティーはほんのわずかね。週1回とか。

地方大学では、そんなことは考えられないわけ。そんなことはやりたくてもできない。教育や診療のデューティーがあって、それをわずかの人数でやっているわけですよ。だから、旧帝大から優秀な先生が地方大学に赴任しても、研究環境に圧倒的な差があるので、せっかくの能力が十分発揮できないことになります。

【湯浅】 地方の観点から見れば、旧帝大が人材を圧倒的に増やして、お金をもう大量投入して、完全に研究大学としてやったところで、伸び詰まりのポイントみたいなものがあって、そこからは「資金を投入するほどに研究生産力と質が上がる」、という単純な公式とは違った公式になる可能性もありますよね。

一方では、実際、現在においては旧帝大は研究費や人材を集中投入することで論文数が確実に増えている実績があるわけだから、もっと選択と集中をするべき、という意見もあると思うのですが。

【豊田】 そうそう、一つのデータに両面の解釈ができることはしばしばありますね。選択と集中もいろいろな考え方がありうるわけです。質の高い論文数をたくさん産生している旧帝大を中心とする大学を選択と集中すべきであるというのが現在の国の考え方ですが、しかし、選択と集中しすぎると、効果の逓減が起こって、ある点以上は効率が悪くなるわけです。

むしろ、研究環境が悪いために、能力を発揮できない優秀な先生のいる地方大学に投資をした方が、費用対効果が高いかもしれません。

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