日本の科学の明日はどっちだ!? パネリスト、近藤滋氏(オープンフォーラム・ガチ議論予測1)


10月25日サイエンストークス・オープンフォーラムの登場人物を紹介しながら、当日の議論がどう展開されるのかを編集部が独断と偏見で勝手に予測するこのシリーズ。今日はパネリストである大阪大学教授、近藤しげる(こんどう しげる)氏。近藤氏のウェブサイト、「生命科学の明日はどっちだ!?」とご本人のツイッターから、当日の議論を【勝手に】予測してみます。
近藤滋 氏 shigeru-kondo Shigeru Kondo
大阪大学大学院生命機能研究科 教授、日本分子生物学会理事

徳島大学教授、理化学研究所チームリーダー、名古屋大学教授を経て現在大阪大学大学院生命機能研究科教授。2014年度からは日本分子生物学会理事に就任。第36回日本分子生物学会年会長として、斬新な企画と運営を行う。「日本の科学を考えるガチ議論」では研究者と政府が本音を語る場を作るなど、学会の存在意義を塗り替える様々な試みをされている。

研究室公式ウェブサイト
こんどうしげるの「生命科学の明日はどっちだ!?」
日本の科学を考える

 
近藤滋氏といえば、記憶に新しいのが昨年の第36回日本分子生物学会年会。第36回はジャズバンドあり、クマムシが巨大化する2050年シンポジウムあり、日本を代表する著名な研究者の肖像画への落書きコーナーありの、およそ学会の年会らしからぬユニークかつクレイジーなイベントとなりテレビでも取り上げられるました。その仕掛け人が年会長を務めた近藤氏。
話題となったイベントの一つ、「生命科学の未来を考えるガチ議論」では、文科省、政治家、起業家、研究者が一同に会して言いたいことを言い合う「ガチ議論」を開催。会場500名、ライブ観戦者3000人の科学技術政策の大規模イベントとなりました。近藤氏の動画インタビューに「学会なんていらない」と発言があるように、第36回年会は、日本最大の学会である日本分子生物学会を土俵に使って、学会そのものの存在意義を根本から問いなおすイベントでした。
「ポスドクの就職問題も厳しくなっていて(中略)捏造問題もある。じゃあそれを解決するために責任を持ってやってる場所があるかって言ったら、結局無いんですよ。で、そう考えてみると、それが何かできそうなところと言ったら、分野全体を網羅している学会というものしかもうなくて。もう僕は学会なんていらないと思ってるんで。唯一(学会の)存在意義があるとしたらそこだな、と。」(動画から抜粋)

学会の常識を破壊する 新しい試みの数々。ただし、ただ破壊するだけでなはく、ひたすらオモシロく破壊するのが近藤氏のスタイルであり、稀有な才能であるようです。2011年に行われた伝説のイベント「ジンクピリチオン祭り in 分子生物学会」もその一つ。
ShigeruKondo_blog
「ジンクピリチオン」とは、メリットシャンプーに以前配合されていた防腐剤、ジンクピリチオンの効果を謳って花王が「ジンクピリチオン配合!」と宣伝して話題になった成分。意味はわからないが迫力とインパクトで異様な説得力を持ち、消費者がつい買ってしまう言葉の威力をエッセイストの清水義範氏が「ジンクピリチオン効果」と名付けました。近藤氏はこの効果生命科学系の論文にもやたら使われていると指摘。「小難しいカタカナ語を論文で使うのはやめよう」と言う代わりに、「ジンクピリチオン祭り」と称してジンクピリチオン効果をやたら使って成功した論文を表彰するという逆説的なイベントを開催。
「ジンクピリチオンが何であるのか、つまり、動物なのか、鉱物なのか、植物なのか。甘いのか酸っぱいのか、硬いのか柔らかいのか、押し出しが強いのか人当たりが良いのか。そういうことを知ったとしてもあなたに何の利益があるだろう。そのようなことを知っていることを、無駄な知識と言うのである。ジンクピリチオン配合。虚心に、この言葉だけに耳を傾けなければならない。そしてそうすれば、あなたは必ずこう思うはずなのである。なんだか、すごそうだ。その心の声こそが、この言葉を聞いた時の正しい反応なのである」
「さて、我々研究者も、論文や申請書を書くとき、レビューアーに「すごいっと」感じさせたいのは同じである。正確さはもちろんだが、表現力も重要だ。もっと魅力的に書けたらなぁ、とはいつも思うが、我々理系の人間に「名文」など書けるはずが無い。では、レトリックによる論文・申請書のレベルアップは諦めざるを得ないのか?いやいや、そこで「ジンクピリチオン効果」です。爆発性用語の破壊力で、お手軽に論文や申請書を「凄そう」にできるのです。」
一見ふまじめに聞こえるこのメッセージも近藤氏の戦略。おかげで「ジンクピリチオン効果」という言葉の宣伝効果は抜群で、やたらインパクトのある難しいキーワードを使う研究者が減ったという。常人にはできない大胆な啓蒙活動です。 STAP事件をめぐる一連の騒動でも、元理研チームリーダーとしてかつ生命科学を代表する研究者として、積極的に発言や議論を巻き起こしている近藤氏。
国際的に重要な研究成果を発表し続ける傍らで、研究者としてのあり方、学会の意義や、科学技術政策のあり方を普通でないやり方で問い続ける活動に、一人の研究者の力でここまでできるのか、変えられるのか、とエンパワーされている若手研究者も多いはず。 イベント主催者ではなくいちパネリストとしてどんな発言が聞けるのか、オープンフォーラムが楽しみです。
 
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