「4月の学期はじめ時点から赤字の研究者までいる 」
熊本大学学長・谷口功氏インタビュー(4)
- 日本語記事インタビュー日本の研究ファンディングを考える
- September 19, 2013
【湯浅】 半分以上の研究者が100万の研究費すら外部資金から受けていないと。その方たちには一応、大学から出ている研究費もありますよね?
【谷口】 まず科研費等の外部資金は、研究目的が決まっていますので、一般的な研究費として使用できません。一方、研究費としていわば自由に使えるお金、いわゆる校費は、1人当たり50万円あるかないかです。これは、校費の中から、電気代、図書経費、図書館で購入する外国雑誌の分担金などの研究ユーテイリテイー経費が引かれることになっているからです。
円安になれば、この負担が大きくのしかかってきます。このユーテイリテイー経費分は、校費から支払う必要があり、いわゆる外部資金では、支払えないことになっています。このため、校費については一人当たり3〜40万円程度は消えてしまいます。その結果が、一人平均多くても50万円ということです。これには旅費等も入っていますから、学会や調査などで1〜2回出張したり、書籍や専門雑誌等を購入すれば残りも少なく、本当に研究に使えるお金は殆ど無いですね。
【湯浅】 なるほど、校費による研究費には、純粋に研究に使う分以外にもそういった図書館や研究室のメンテナンス費用まで入っているわけですね。しかし、1人あたま50万あるかないかというわけですか。かつ、研究者の中の50%が100万以下の外部資金を運用しているとなると、研究費として年間に使える額はとんでもなく低いですね。
【谷口】 そうなんですよ。研究者は、年度始めの4月時点で前年度の使用額の貸し借りを調整しますので、外部資金を持っている研究者、特に理系や生命系の研究者でも、また外部資金を持たない研究者はもちろん、4月の学期はじめにすでに赤字という研究者も多くいます。
すなわち、研究費に関しては、外部資金は、まさに命綱になっています。一方で、基盤的な経費(校費)が一定程度ありませんと、外部資金があっても、日常的な研究教育活動に支障が出ることもしばしばです。研究者により過度な研究資金の差や基盤的経費の貧弱さの程度が度を超しますと、教育研究にとって良い状況とは言えません。