「“私立だからこそ”予算をつける、アメリカ式思考」
中部大学理事長・飯吉厚夫氏インタビュー(9)
- 日本語記事インタビュー日本の研究ファンディングを考える
- September 16, 2013
アメリカでは私立の大学に多大な予算が回されているが…。私立大学への予算配分に関し日本が考えるべきことをお話いただきます。
【湯浅】 今までのお話、とても興味深いですね。要は地方の私大や国立大でも自分たちの力でやれることはたくさんあるんだなというのが改めてわかりました。
【飯吉】 米国のアイビーリーグっていうのはほとんど私学なんですよ。プリンストン大学も私学です。プラズマ物理研究所にはエネルギー省のDOE(Department of Energy)から大きなお金が来るんです。考えられないでしょう? 日本では私学にそんな大きな予算が行くなんて。
アメリカの場合は国立はないから、州立大学ですよね。州立大学に大きな予算が行くならわかるけど、どうして…。
【湯浅】 私立に…、そうですよね。
【飯吉】 一つには私立のほうが経営感覚があると、経理的な面では進んでいるはずだと、そういう認識なんですよ。マネジメントは私立のほうが得意なはずだと。だって、自分たちでお金を稼いで、それでやらなきゃならないでしょう。
【湯浅】 確かにそうですね。
【飯吉】 だから、マネジメントは私立に大きな予算をつけても大丈夫、っていう感覚なんですよ。
【湯浅】 なるほど、ずいぶん日本とは感覚が違いますね。
【飯吉】 ただ、わが国には憲法にへんな制約がある。
【湯浅】 先ほどのお話ですよね。
【飯吉】 どうして私立大学が民間になるんだろう?と不思議に思いますけどね。同じ教育じゃないかと。だから、あのあたりから変えないといけないんですよね。解釈でどうにでもなるんですけど。日本の教育研究費の国家予算に占める割合がOECDの先進国の中で一番少ないと言われるでしょう?
【湯浅】 はい。
【飯吉】 それで、ほかの国は1%か2%は国家予算が使われているのに、日本は0.5%だと。それを増やさなきゃいかんということで、今、日本の私立大学は600ぐらいあるんですかね。
【湯浅】 そうですね、はい。
【飯吉】 それで、学生の数が210万人ほどですかね。そのうち国立の学生数が61万人くらいかな。私学では親が学費を払っているわけですよ、国の代わりに。だから、そのお金を国が払えばちょうどOECDの先進国と同じ位の比率になるんです。
【湯浅】 予算を増やして欲しいから、そういうお話しをされているんですよね。(笑)
【飯吉】 そうそう(笑)。だけど、大事なことを忘れているんじゃないですか? 結局、全部が全部とは言いませんけど、やっぱり多様性の中から優秀な人が出てくる確率というのも高い。