「科研費採択率アップの可能性」
内閣官房健康・医療戦略室 次長・菱山豊氏インタビュー(4)
- 日本語記事インタビュー日本の研究ファンディングを考える
- October 11, 2013
日本の研究者にとって科研費の採択率を向上させる方法はあるのか。研究に対する国家のアプローチに迫ります。
【湯浅】 今、科研費をもらえない人が圧倒的多数だとおっしゃいましたが、現場の研究者の声として、科研費は一人ひとりに配分する額を少しずつ減らしてでも採択率を3割から5割、6割に上げてもっと満遍なく研究費を配分してほしいという意見があります。そういったことは現実的に可能なんでしょうか?
【菱山】 そういう意見もあると思いますが、既に研究費の一人当たりの額は多くないので、その配分をさらに小さくするというのは、簡単ではないかもしれません。
【湯浅】 研究費が取りづらい競争的な環境が極端に進むと、研究者もどうすれば継続的に芳醇な研究費が取れるのかいろいろ知恵を絞りますが、その結果としていろいろな問題も生まれてきます。
たとえば名の知られたジャーナルに論文を掲載して研究経歴に箔をつけるために話題性のある研究テーマに多くの人が飛びつきがちだったり、極端な話、データ改ざんなどの研究不正も起きています。何十年後に芽が出るかもしれない研究に、研究者が目を向けなくなるのではという意見もあります。
【菱山】 ただ、採択率が3割といっても、科研費はすべての分野を対象としていますから、種まきとしての役割は果たしていると思います。文科省は学術の外の世界の人たちからは、社会の役に立たない研究や、趣味のようにしか見えない研究に国費を使うな、貴重な税金を役に立つ研究に集中しろといった批判の声を受けることすらあります。
それでも科研費の額を増やして可能な限り満遍なく配分するようにしているわけです。やはり研究は何が飛び出すかわからないから面白いんです。ただ、研究不正の理由を競争に求めるのはすじが違うでしょう。また、箔をつけるために、などと言ってもそう簡単には成果を出せないと思います。