「“お金をもらうのは真剣勝負!”という意識の欠如 」
中部大学理事長・飯吉厚夫氏インタビュー(8)
- 日本語記事インタビュー日本の研究ファンディングを考える
- September 16, 2013
シリーズ8段目では、科研費の申請が採択されるためのアドバイスを教えていただきました。
【飯吉】 でも、その代わり、研究費をとってきたらちゃんと成果を出さないとね。その辺がやっぱり厳しい。お金が大きくなればなるほどですよね。だけど、昔はお役人さんにも機械的に処理をするんじゃなくて、本当にその研究にほれ込んじゃうという役人がいたんですよね。
【湯浅】 昔はそういう方がいたんですか。
【飯吉】 ええ。だから、核融合にほれ込む役人もいれば、加速器にほれ込む人もいて。その代わり、我々は何か新しいデータが出ると、真っ先に文科省に持っていっていましたからね。本当は論文で出さなきゃいけないんですけど、そんなことよりもまず文科省に持っていって。
【湯浅】 まずは文科省にですか!
【飯吉】 今は学術機関課とか学術助成課なんかがそういう窓口になったんですけど、この間聞いたら、「最近はだれも来ませんよ」って言っていました。
【湯浅】 そういう研究者と文科省を直接つなぐパイプなんかも今は消えてなくなっていると。
【飯吉】 なくなっているんですよね。だから、「お金をもらうことは真剣勝負」だという意識が今はなくて。
【湯浅】 それはもらう側の意識の問題ですか。
【飯吉】 取れないのは自分が悪いんじゃなくて、なになにが悪いとかね(笑)。
【湯浅】 国が悪いとか。大学はそういう点、売り込み努力みたいなことをしているところが多いですよね。
【飯吉】 そうですね。やっぱりいい成果だと思ったら、黙っていられないはずですよね。だから、やっぱり研究にどれだけ成果というのが出てきているかにつきます。世界で初めての研究だったら、本当にもうこれは何とかしなきゃという気になりますでしょう。
【湯浅】 でも中部大学だと、「じゃあうちは超伝導で行く」という決断をする立場の人、つまり先見の明を持って、この分野にポテンシャルがあるから大学の資金を投入して伸ばして売り込んで、企業なり国からお金を取りにいこうというのを決められているのは、飯吉総長ご自身ですか?
【飯吉】 まあ、今やってる超伝導は私ですね。ただし、中部大学でも研究が盛んになったのはここ20年ぐらいですからね。最近は教員の意識も変わってきて、ずいぶん大きな予算も取ってくれるようになりました。世界的な研究成果も出始めました。