AAASの歴史と成り立ち

AAAS 国際部長 トレキアン氏特別インタビュー!

AAASの歴史と成り立ち

2014年3月13日に、サイエンストークス副委員長の湯浅誠が政策研究大学院大学 科学技術イノベーション政策プログラム主催のセミナーに参加しました。
(※詳細はこちらから:http://www.editage.jp/blog/join-in-aaas/

その際、講演をしていただいたAAAS(アメリカ科学振興協会/通称トリプルエーエス)の国際部長トレキアン氏をお招きし、政策研究大学院大学の小山田氏を交えて、AAASの取り組みについてお話しいただきました。

サイエンストークスの目指す理想像ともいえるAAASにフォーカスしたインタビューシリーズ。お楽しみください!

[aside type=”boader”]【AAAS(トリプルエーエス)について】
キャプチャ4
AAASとはAmerican Association for the Advancement of Scienceの略称で、科学の自由化と促進を目的とする非営利団体である。学術団体としては世界最大級であり、メンバー数は世界中で12万人を超す。世界的に有名な科学雑誌「Science」の出版をおこなっている他、様々な科学振興活動を世界的規模で続けており、“科学、工学、およびすべての人々の利益のために、世界中の革新を促進する”ことを理念としている。
AAASホームページ[/aside]

BeFunky_IMG_1997.jpgヴォーン・C.トレキアン氏(Vaughan C. Turekian)
2000年 ヴァージニア大学Environmental Science博士号取得
2000~2002年 米国科学アカデミー Commitee on Global Change調査ディレクター
2003~2006年 国務省地球規模課題担当次官特別補佐官
現職 AAAS Chief International Officer(国際部長)

 

 

BeFunky_IMG_2100.jpg小山田 和仁氏(Kazuhito Oyamada) 
2003年 東京大学大学院総合文化研究科

2003~05年 独立行政法人産業技術総合研究所特別研究員 (技術と社会研究センター、技術情報部門)
2005年 政策研究大学院大学助手
2006年 独立行政法人日本学術振興会国際事業部研究員
2011年 独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー
2012年より 政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策プログラム専門職

AAASの歴史と成り立ち

AAAS国際部長トレキアン氏との対談インタビュー。第1回目は導入として、AAASという世界規模組織の歴史と成り立ちを伺いました。約150年前、少数の科学者達が立ち上げた組織はどのような目標を抱え、どうやって現在の姿へと進化してきたのか。

湯浅 本日はインタビューに応えていただきありがとうございます。さて、日本の学術界に所属する多くの方々はAAASを科学雑誌「Science」を出版する団体として認識しています。

ただ、実際AAASがどのような活動を行っているのかを知っている方は少ないと思います。あなた方の具体的な活動内容と、それを踏まえてのサイエンストークスへのアドバイスなどをいただけますか?

F1.medium

トレキアン氏 AAASは1848年に発足した科学研究振興組織です。多岐に渡る理系の学問領域、即ち科学、工学、医療保健などの分野を対象として活動しています。基本的にはアメリカでの活動を中心に行っていますが、グローバル規模にも動いています。

組織はもともと1848年、アメリカ合衆国政府が科学に十分な注意を払っていないと感じた科学者たちにより創始されました。当時の合衆国政府は橋や鉄道などの社会インフラへの投資を通して国を発展させることを志向しており、研究者のコミュニティは比較的軽視されていました。

創始者達は科学に携わる研究コミュニティ全体の主張を代弁する組織の必要性を説き、そこからAAASを立ち上げたんです。組織は科学者達の研究を促進するだけでなく、必要な経費と施設を調達するなど科学の発展に不可欠な機能を果たしました。

湯浅 ではAAASは当初、科学者の小さなグループから始動したんですね。

トレキアン氏 ええ、最初は実に小さなグループでした。目的達成のために彼らは、身内で集会を開くだけではなく、アメリカ全土で定期的な集会を開催しました。こうすることで対象となる研究分野の枠組みを拡大し、社会における科学研究の影響力を促進する狙いを持っていました。

重要なポイントは、同じ目標とビジョンを持つ研究者全員に開放的なアプローチを取ることでした。今でも勿論そうです。メンバーは個別で選抜されるわけではありません。AAASのミッションに賛同するものは全員がメンバーになれます。

湯浅 とても面白い話ですね。私達サイエンストークスもまさにそんなコミュニティを建設していきたいと思っています。

BeFunky_IMG_1995.jpg
トレキアン氏 19世紀後半に新しいジャーナルが出版されました。かのトーマス・エジソンが創刊した学術誌「Science」です。元々AAASとサイエンスの間には相互補完的な関係がありましたが、20世紀初頭にAAASがサイエンス紙の権利を購入することで、学会の公式のジャーナルとなりました。

サイエンスはその後米国の最高峰の研究を掲載する雑誌となり、これは科学の振興を促す我が組織にとって非常に重大な意義を持つことになりました。一つの学問領域に絞ることはせず、AAASに所属する全科学分野を育成し、推進する機能を果たすことができました。

湯浅 AAASのビジョンによってサイエンスは多岐の科学分野を掲載する雑誌になったのですね。このジャーナルこそが成功の土台になったのかと。

トレキアン氏 ええ、AAASの発足当初は組織内のガバナンスと科学研究界をひとつの屋根の下に集めるための活動を中心に据えていました。そしてその次の段階は、科学の知能を世間に共有するためのジャーナルを作ることです。

さらに第三段階が、広範でしっかりしたプログラム作りの活動です。具体的には科学教育、科学倫理、科学の国際的側面、市民とのコミュニケーションと科学への市民の参画などです。この第3段階こそがAAASにおいて現在急成長している部分で、どうやって科学の様々な分野を進めて行くかというだけでなく、どのようにしてよりよく科学を社会や政策決定者と関与させていくかということにかかわるところです。

湯浅 なるほど。

トレキアン氏 あと、AAAS Science Policy Fellowshipなど、政府内で働く科学者のメンバーを増やそうという取り組みもあります。更に科学コミュニティと一般社会との意見交換を促すプログラムもいくつもあり、科学者が一般の方々と効果的に意思疎通できるようトレーニングを行うことで、優先的に取り組む問題点を発見することができます。

そしてそれ以上に、我々がどのような研究をしているか説明することで、ファンディングを受けている研究が学術的に興味深いだけではなく、経済の活性化、並びにアメリカとグローバル経済の社会システムのセキュリティと健全性の強化に貢献していることを伝えています。

――AAASが現在の姿に至るまでについての経緯と理念について語っていただきました。次回乞うご期待!

[kanren postid=“2764,2859,2872,2877,2882”]

Related post

総合科学技術・イノベーション会議とは?

総合科学技術・イノベーション会議とは?

総合科学技術・イノベーション会議の議員の構成というのは極めて重要です。関連の大臣が入っているので科学技術の政策がいろいろなところで展開され、関連の大臣がみんな入っているということは自ら決めていく。FIRSTは日本が非常に誇るべきシステムです。
日本人の感性と感情にある豊かな言葉をサイエンスで生かすべき

日本人の感性と感情にある豊かな言葉をサイエンスで生かすべき

サイエンス分野では日本語でしか発見できないことがたくさんあります。日本人の感性と感情に豊かな言葉があって、実はその中で大発見がうまれてきている。基本的な考え方として、ここを抑えておかないとどんなに政策提言をしても世の中は変わりません。
好奇心と掘り下げ続ける力こそが研究

好奇心と掘り下げ続ける力こそが研究

リバネスのモットーは『科学技術の発展と地球貢献を実現する』。小中高校生への「出前実験教室」を中心に、幅広い事業を手がけている企業、その設立者であり代表取締役CEOをつとめる丸幸弘氏にインタビューさせて頂きました。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *