大学戦略としての デジタルマーケティング

大学戦略としての デジタルマーケティング

延世大学大学院開発部副学長 ドンノキムへのインタビュー


―多くのアジア圏の大学は研究プロモーションとマーケティングの大切さに気づいていないと思います。どのようにしてその重要性に気付いたのですか?

基本的には、研究プロモーションでベストな方法は質の高い論文を書いて広く読まれているトップジャーナルに掲載することです。例えば、『Nature』、『Science』、『Cell』などに研究が掲載されれば誰もがそれを読み、延世大学の教授が書いたものであると知られるでしょう。そのため、我々は長期的戦略としては研究の質を高める努力を行っています。同時に、現代の国際競争を生き残るには、長期的なゴールを達成するのを待っているだけではいけません。ギャップを埋めるために短期的な戦略も必要です。デジタルマーケティングは私が利用した中でもベストな短期的戦略でした。ご存知の通り、有名なジャーナルに掲載された論文だけが影響力のある研究ではありません。重要な研究結果なのに認知されていないものもたくさんあります。良い成果物があるのにマーケティングをしなければ、誰もその知識が存在することを知らないのです。これによって実際の研究パフォーマンスと大学の評判のギャップが生じます。私はこのギャップを埋めたいのです。

―多くの大学がソーシャルメディアをマーケティングに使用していますが、延世大学はとても真剣にソーシャルメディアで研究のプロモーションに取り組んでいますね。

多くの研究者たちはいまだにソーシャルメディアに注目していません。楽しむためのものだと思っているのです。全てのマーケティングメソッドを試したら、ソーシャルメディアが研究プロモーションに不可欠なメソッドだと気付きました。あらゆる使用可能なチャネルを全て使用し、デジタルマーケティング分析を使ってパフォーマンスを計測しました。ソーシャルメディアは研究プロモーションにとって有力なツールなのです。

 

—研究コンテンツのデジタルマーケティングキャンペーンを成功させる鍵とは一体なんだと思いますか?

コンテンツの質と視覚化です。我々は研究をプロモートするときにはコンテンツ作成から取り掛かります。コンテンツスペシャリストが学部の研究員からコンテンツを集め、デザインスタッフがそれをキャッチーなインフォグラフィックにするのです。ビジュアルのインパクトはウェブサイト上のリサーチニュースにトラフィックを集めるのに非常に重要です。我々は、ある分野に特化した質の高い情報がたくさん見られるリサーチハブとなるウェブサイトへターゲットをシステマチックに誘導するプロモーションチャネルをいくつか用意しています。

―延世大学にはとても力のあるデジタルマーケティングチームがありますね。どのようにスタートしたのですか?

大学所属のデジタルマーケティングチームを、大学開発戦略室の内部に作りました。延世大学にはマーケティング部門がなく、リサーチプロモーションをするのは初めてでした。ゼロから始める必要があり、国際的な水準に追いつくために努力しなければなりませんでした。チームはウェブサイトを改善し続け、人気のあるプラットフォーム全てでアクティブに活動しています。私自身も毎週キャンペーンのパフォーマンスをチェックし、戦略を一緒に練っています。

 

 

—多くの大学が、発信すべきリサーチニュースを集め、選出するのに苦労しているようです。延世大学ではどのように学部のメンバーから最新の研究を集めて、配信する優先順位を決めているのですか?

研究論文を集めた独自のデータベースがあり、学部員によってリアルタイムでアップデートされています。研究コンテンツを集めるのに苦労している他の大学と違い、我々は膨大なデータベースの中からどれを選ぶかに苦労しているくらいですね。大学の学部員は、自分の論文発表をデータベースを使ってリアルタイムで申告するように支援されています。スタッフがデータベースにアクセスし、プロモートするアイテムを選びます。このシステムを作ったのは、学部員がインターナルレビューのためにシステムを使い、データを常にアップデートできるようにするためです。高頻度で引用されるジャーナルに掲載された論文は優先順位が高くなります。一般市民にとってのトピックの興味深さと時流にあっているかも評価基準となります。例えば、社会科学の研究が発表された時はジャーナルの影響力は無関係ですが、多くの人にとって興味深い内容となることもありますね。

―大学の評価を築き上げるのには長い時間がかかります。多くのことをされていますが、どのプロモーションメソッドが最も影響力があると思いますか?

本当のことを言うと、全くわかりません。すぐに結果が出るものもあれば、時間のかかるものもあります。しかし長期的には全てのメソッドが何らかの影響をもたらすと信じています。関連性があり、持続可能なことであれば、我々はできることを全てやります。我々の戦略は、インハウスのマーケティングスペシャリストをトレーニングし、サポートすることによって、長期的で持続可能な方法で大学の評価を向上し続けることです。

そうすることによって、彼らもモチベーションを保ち、良いコンテンツを生み出すために努力するでしょう。我々の努力が実を結ぶか、いつも予想できるわけではありません。しかし近い将来、結果が出るような気がしています。大学の評価を高めるために、長期的、短期的な投資を行いできる
ことは全て挑戦し続ける必要があります。


雑誌「ScienceTalks」の「韓国大学のロバストな革新」より転載。

Related post

大学の改革を進める:韓国の大学から学んだこと

大学の改革を進める:韓国の大学から学んだこと

延世大学とSKKU大学へTHEランキング向上に関する戦略についてのインタビューを行い、彼らがいかに目標を定めコミットしていたかに感銘を受けました。 彼らは、大学をより良い場所にし続けるという、より大きくて長期的な目標を持っていたのです。
THEのランキングメソドロジー:「世界大学評判調査」の重要性

THEのランキングメソドロジー:「世界大学評判調査」の重要性

世界ランキングを上げるためには、ランキングシステムを理解する必要がある。そこで本項ではどのようにTHEのランキングシステムが機能しているかを説明する
自らの大学を知れ、そして改革への戦略を立てよ

自らの大学を知れ、そして改革への戦略を立てよ

延世大学は、劇的な改革によってTHEランキング上昇を達成し、他のアジア圏の大学の追随を許さない。グローバル時代に躍進するために大学の世界大学ランキングを上昇させる術を示してくれる素晴らしい事例である。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *