自らの大学を知れ、そして改革への戦略を立てよ

自らの大学を知れ、そして改革への戦略を立てよ

延世大学は、THEランキングが実施したランキングメソドロジーの変更によって2016年に大幅な大学ランキングダウンを経験するが、劇的な改革によってランキング上昇を達成し、他のアジア圏の大学の追随を許さない。延世大学開発戦略室副室長キム・ドンノ教授へのインタビューによって、このランキング向上が偶然ではなく、戦略と素早い実行に基づいた改革であるということがわかった。延世大学は、グローバル時代に躍進するために大学の世界大学ランキングを上昇させる術を示してくれる素晴らしい事例である。


ケーススタディ記事:大学革新を推進するためのランキング

「ターニングポイントは2015年でした。」延世大学の大学開発戦略室副室長であるキム・ドンノ教授はこう振り返る。「THEのランキングが急落したのです。1年後に私がこの役職に就き、最初にしたことは大学の状況を詳細に調べ、ランキングを回復するためのプランを立てることでした。」

2015年、THEはランキングメソドロジーを大々的に変更した。リサーチデータベースをウェブ・オブ・サイエンスからSCOPUSに変更し、トータルスコアの33%を占める「レピュテーションサーベイ(評判調査)」の回答者を選出するようになったのだ。

延世大学のランキングは、190位から2015年には201~225位、2016年には301-350位に落ちた。しかし、2018年には201-250位まで急速に回復した。

キム教授が述べたように、この回復は偶然の産物ではない。新任したばかりの副学長であり社会学者でもあるキム氏は、まずゲームのルールを学んだ。THEのスコアリングメソドロジーを攻略し、ランキングの弱点となっている要素を分析したのである。そして学長に次の4つのステップを提案したのだ。

評価とインセンティブシステムの見直し

延世大学が最初に対応したのは、研究評価システムだった。他の多くのアジア圏の大学のように、評価は発表論文の質ではなく数に基づいてた。研究者たちは昇進を確実なものにするために論文をできるだけ多く発表したが、それが被引用論文スコアを下げ、延世大学の評価に影響を及ぼしていたのだ。延世大学はすぐにパフォーマンス評価基準から論文の発表数を除外し、質に基づいた評価方法へと移行した。

延世大学では技術移転を昇進評価の中で最も重要な評価基準の一つに加えた。研究者にいかに多くの技術移転を実行するよう奨励するかは、多くの大学が直面している課題である。延世大学はこれを解決するため、技術移転を多く実施している研究者と、論文を多く発表している研究者を同等に評価する仕組みにしたのである。こうすることで、技術開発に重点を置いている研究者に同等の昇進機会を与えられるようになった。

さらに技術移転を促進するため、大学は大きな成果報酬を導入した。研究者が政府から研究資金を授与された場合、収入の80%が研究者に還元される仕組みだ。さらに民間企業からの資金であれば、最大で90%が還元される。これは、韓国の大学の間で非常に高い水準である。このシステムにより、研究者は自身の技術を実践的に応用するために産業と積極的に協働するようになった。こうした変化によって、延世大学は産業収入のスコアが2年間で75.9から99.2へと上昇したのである。

研究者グループに新鮮な空気を取り込む

2つ目の重要な改革は、採用ポリシーにあった。「何年もの間、我々の採用戦略は、中堅の研究者を他の大学からヘッドハントすることでした。しかし、それがベストな方法ではないと気づいたのです。」とキム教授は語る。「若い研究者はもっと生産的です。我々は採用ポリシーを見直し、より多くの若いポストドクター達を採用することにしたのです。さらに、学長はもっと野心的なポリシーを実行しました。退職する教授一人につき、若手研究者2人を採用することにしたのです。例えば、10人の教授が今年退職するとしたら、我々はそれを埋めるために20人の若い研究者を採用するのです。」

新しく採用された若い研究者には、いずれ終身雇用が認められる雇用ルートが保証されており、研究に専念できる。雇用されてからの2年間、1セメスターにつき1クラスを担当するだけでよく、3年勤続すると1年間の研究休暇が与えられる。研究休暇は、研究者が国際的に注目され、国際的な共同研究をする能力を育てるための大学側の戦略だ。

デジタルマーケティングとPR

最後に、延世大学が変革の鍵となると見ていた最もユニークな戦略が、「デジタルマーケティング」だ。キム教授は分析の結果、大学の実際の研究能力と評判調査の結果に大きな乖離があることを発見し、研究のプロモーションと広報に問題があると結論づけた。「そのため、大学開発戦略室直下にデジタルマーケティングチームを設置しました。」とキム教授は答える。彼のデジタルマーケティングチームにはオンラインマーケティングのプロやコンテンツライターが所属し、論文発表のグローバルPRキャンペーンを積極的に運営している。リサーチプロモーションは延世大学の戦略の要であるため、キム教授自らがキャンペーンパフォーマンスやウェブ解析、そしてSNSにおけるパフォーマンスを毎週チェックしている。

「ランキングは大学の実際のレベルとは無関係で、ひとつの指標に過ぎません。ただの数字であり、対策を取らないと言うこともできますが、このような粗末な結果を、大学を変革する機会に変えることもできるのです。」とキム教授は語った。

キム・ドンノ教授シカゴ大学で博士号を取得したのち、1995年より延世大学校社会学部の教授として在職中。主な研究分野は歴史社会学、社会運動、社会理論。現在は延世大学にて大学開発戦略室の副室長を務める。

雑誌「ScienceTalks」の「韓国大学のロバストな革新」より転載。

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