「そもそもなんで『第5期科学技術基本計画』、勝手に作っちゃうことにしたんでしたっけ? 〜勝手に「第5期科学技術基本計画」編集部反省会(第1話)〜

「そもそもなんで『第5期科学技術基本計画』、勝手に作っちゃうことにしたんでしたっけ? 〜勝手に「第5期科学技術基本計画」編集部反省会(第1話)〜


2016年1月22日、政府の第5期科学技術基本計画が正式に閣議決定されました。 2014年から内閣府、総合科学技術イノベーション会議(以下CSTI)で検討が始まっていたこの計画の制定に向けて、サイエンストークスでは「勝手に『第5期科学技術基本計画」みんなで作っちゃいました!」という企画を立ち上げ。2014年5月から2015年3月までの10ヶ月間、政府の検討と同時進行で研究コミュニティを巻き込んで、研究現場・若手のアイディアを計画に盛り込んでもらおうと、ネットやオフ会で意見募集し、提案書を作成。昨年3月、CSTIに向けてプレゼンテーションを行いました。
すでに始まった第5期科学技術基本計画ですが、当然気になるのが、「僕らの提案、少しは盛り込んでくれてるのか?」という疑問。そこで、当時の企画リーダーである小山田和仁さん、編集長の嶋田一義さん、委員会副委員長の湯浅誠さんの3名が集結。政府の答申案をサイエンストークスの提案内容と比較しながら、日本の科学技術の今のこれからについてじっくり語りました。

(収録は2016年1月、政府の答申案を資料として利用しています。)

そもそもなんで『第5期科学技術基本計画』、勝手に作っちゃうことにしたんでしたっけ?

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湯浅 あけましておめでとうございます。 今年も皆様よろしくお願いします。
今日、小山田さんと嶋田さんにお集まりいただいた目的は、「第5期科学技術基本計画」もほぼ固まって来年度には施行されるということで、サイエンストークスで2014年から走らせていた「勝手に『第5期科学技術基本計画』みんなで作っちゃいました」という企画をここで一度振り返ってみようと。
まずそもそもなんですが、「勝手に第5期〜」企画をやろうと考えたきっかけから話しましょうか? 私の記憶だと、確か2年前にサイエンストークスとして初めて「日本の研究力を考える〜激論!未来のために、研究費を今どう使うか?」というシンポジウムを開催したことが始まりだったと記憶しています。
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小山田 そうでしたね。「勝手に『第5期科学技術基本計画』勝手に作っちゃいました!」の始まりは、ジャストアイディアでした。2013年にサイエンストークスで「日本の研究力を考える」シンポジウムをやった後に、 問題を語り合うだけの単発的なイベントじゃなくて、継続的に形に残るものを作りたいという話が出て。
その時ちょうど第5期科学技術基本計画の検討が始まるタイミングだったんですね。基本計画というのは1年という長い時間をかけて作っていくものなので、研究者の間で盛り上がったせっかくの議論を政策につなげて形にできるのではと。
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湯浅 そうでしたね。
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小山田 「第5期科学技術基本計画」を実際に作成された内閣府 総合科学技術・イノベーション会議の原山議員にサイエンストークスでも「勝手に『第5期』」をやってみたい、とご提案しに行きましたね。
結果からするとかなり我々いいタイミングで本物の第5期基本計画のほうも動き始めたところがあって。実は この手のやつはタイミングは非常に重要です。政策の方で検討が始まるのを待ってから動いちゃうとだめなんですよね。
科学技術基本計画って5年ごとに作るんで、どういう流れで作成が進むかある程度見通しが付いていたからうまくいきましたね。結果的に我々サイエンストークスは科学技術基本計画に提言を出した他の団体と比べても、かなり早く動いていたなと思います。
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湯浅 途中紆余曲折もありましたけれど、政府の基本計画の検討スケジュールと非常にタイミングよく進みましたよね。
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小山田 あと、比較的早い段階から原山議員にお声掛けして、総合科学技術・イノベーション会議に常に進捗を届けていました。原山議員もサイエンストークスのイベントにお越しいただいて、政府の基本計画の検討状況をお話ししていただいたりといった連携をしたりと密にやり取りをさせていただいていたことが、2015年の3月に最後に政務三役の前でプレゼンテーションをさせて頂く機会につながったのかなというところがあります。
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湯浅 そうですよね、確かに。最初話を持って行った時には、サイエンストークスなんて聞いたこともない団体の、「勝手に『第5期科学技術基本計画』みんなで作っちゃいました!」なんてインフォーマルな企画に本丸の原山先生が関心を持って連携していただけるのか非常に心配してましたけど・・・。
原山先生としては、基本計画の作成に向けて現場にいる若手の研究者の話を聞きたいということもあって。
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小山田 はい。
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湯浅  小山田さんが第5期という企画テーマを立ててくださったタイミングのバッチリで、原山先生のようなステークホルダーが入ってくださったことも良かった。企画では実際の現場の研究者のみなさんに提案者として入っていただいて、みなさん本業でめちゃめちゃお忙しい中で提案書を作っていただいたり。インターネットやSNSを活用して、1人でも多くの研究現場の方の草の根的な意見を広く集めようと試みました。残念ながらネット上で大量に意見が集められたかというとそうでもなかったですけれど、やはり我々がやりたかったことは、クローズドの会議でお偉い先生方が決めたことをまとめて提案する という科学技術政策の作り方ではなくて、政策のプロセスまで含めてすべてを 開示しながら作り込むというやり方をとりました。これは今までにない動きだったのかなと思います。
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小山田 そうですよね。
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湯浅 現場からの意見収集はオフラインでもやりましたね。1度は東京から大阪まで夜通しレンタカーを飛ばして、学術会議若手の会のイベント会場の横のカフェを陣取って、イベント終わりの参加者の先生方を10人ほどお招きして若手研究者の方の意見徴収をするためのオフ会を開催しました。
サイエンストークス委員の隠岐先生、駒井先生、中村先生がファシリテーターとしてご協力してくださって。委員の宮川先生にご協力していただいて、神経科学SNSのオフ会にゲリラ参加させていただいて、会場にいる若手研究者の皆さんに一人一人アンケート用紙を配って提案へのフィードバックを記入していただいたり、ヒアリングをさせていただきました。
提案にまとめるまでに、意見集めのためのイベントを大小3回開催しました。細々と地道な活動を結構しましたねー。
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小山田 いろいろやりましたね。サイエンストークス委員会も、提案書の方向性を決めるためにかなり何度もやりましたね。
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湯浅 委員の皆さんはSkype通してお忙しい中集まっていただいて。しばしば、委員会では科学史の隠岐先生と脳科学の宮川先生の間で文理の意見の衝突があったり、刺激的でしたね。提案書自体がこういう作り方だったので、周りの皆さんにも結構興味を持っていただけたんじゃないかという気もします。
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小山田 そうですね。最初はネットで科学政策についての意見を集めるという実験をしたんですが、結果的にみれば、まああんまりうまくいかなかったねと。ただ逆にネットを媒体として始めたので、提案書の作り込みのプロセスを途中経過も含めてオープンにしていったというところは、幅広く賛同を得るうえでの手続きとしても非常に良かったんじゃないかな。
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