「研究者すごろく」

藤田保健衛生大学・宮川剛教授インタビュー(5)

「研究者すごろく」
今回のScience Talks-ニッポンの研究力を考えるシンポジウム、第1回大会「未来のために今研究費をどう使うか」、登壇者インタビューでトップバッターを切るのは、藤田保健衛生大学総合医科学研究所システム医科学研究部門、宮川剛教授です。
国内の脳科学研究でトップを走る宮川教授は、研究のかたわら第36回日本分子生物学会年会が主催する「日本の科学を考えるガチ議論」で今の日本の研究評価システムと、それを基にした研究費分配システムについて、まさにガチで国に問題提起をする活動をされています。(※以下、敬称略)


【湯浅】
でもなぜ先生のように効率的に施設を使用されている事例がある一方で、大量の予算がボンッとそれが使い切れないないという現象があるのですか?

【宮川】 それはお金があるところにありすぎるからです。不要なところにまであったりするのです。

【湯浅】 そもそも、どういう根拠でそういった研究室に多額の研究費がつく、という話になったのでしょうね。

【宮川】 今はどうなっているのかわからないですけど、その時はそこを世界で先端的な研究の場にするという目標があって、とりあえず各研究室に多額の予算をつける、と。

【湯浅】 あ、もうそれだけ、なんですか?

【宮川】 もうそれくらいではないでしょうか。

【湯浅】 まずはお金をつぎ込まないとしょうがないだろうと、そういうことですか。

【宮川】 ですね。

【湯浅】 そこにいる研究者の方々の功績には基づいているのでしょうか?

【宮川】 功績はあると思います。マウスの行動解析っていう点では私たちの研究室のほうが上だと思いますけど。

【湯浅】 ある所にはあまるほどあって、無いところには全然ない。

【宮川】 現状のシステムだと、研究費がありすぎて使い切れない程ある所と、全然なくてもう研究おしまい! というような所に分かれます。

研究者すごろくみたいなものですよね。研究して、ある程度実績が出て、地方国立大学教授へのポジションにつく。でも、そこで研究は終了、研究すごろくはあがり、というような。

【湯浅】 研究者すごろく…

【宮川】 そうです。そこで終了じゃなくて、もうちょっと先を目指すかどうかが問題です。そこで終わりと思ってしまえば終わりになります。もうその先研究をやらなくても全く大丈夫ですから。これ、一般の国民の人とかどう思っているのでしょうか? 湯浅さんは研究者ではないので、いわば一般国民ですよね。

【湯浅】 ええ、わたくし完全なる一般国民です。

【宮川】 そういう状況っていうのは一国民としてどうなのでしょうか? 僕は一納税者としては、この状況、愉快とは感じられないなのですが。

【湯浅】 あのー、私のような立場だと、仕事柄大学の先生たちに近いところで仕事をしていますからちょっと一般的な視点とは離れているかもしれませんけど、むしろ、一般的な、研究と関わりのない人たちからすると「大学教授=スゴイ人」というイメージしかないので、あんまり事情が知られていないのではないでしょうか。

【宮川】 「わからない」、ですよね。

【湯浅】 大学生なんかは2回に1回は休講の先生とかいても、逆にうれしかったりして…。

【宮川】 はいはい。

【湯浅】 ただ、単純に今納税者の立場になってみると…。うちの会社でもちゃんと納税していますから、その立場からすると一般の企業だったらその状況ってありうるのかな、とは思いますね。

【宮川】 ちゃんとやって欲しいですよね。一般納税者の方々が出資して、ある意味税金を通じて研究に投資しているのですよね。

【湯浅】 そうですよね。その意識、おそらく先生はすごくお持ちだと思うのですが…。

【宮川】 僕はかなりもっていますし、同様な問題意識を持っている先生方は多いです。

【湯浅】 たぶん、そういう意識が薄い先生が結構いらっしゃるのかなと。

【宮川】 たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

【湯浅】 今回のシンポジウムに来てくださる先生方は問題意識を持っている方がほとんどだと思うので、それがシンポジウムを通じて広がっていくというのが理想ですよね。

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