レベッカに聞いてみた!F1000Researchの仕組みってどうなってるの?
- オープンサイエンス出版日本語記事
- February 3, 2021
Q1. F1000Researchではどれくらいのスピードで出版できますか?
A1. わずか14日間で論文を出版できます。編集や出版前の査読がないので、出版が遅れたり中止になったりすることはありません。F1000Researchに論文が投稿されると、剽窃や倫理規定、読みやすさ、所属機関などについて、客観的に厳しくチェックします。著者がデータを整理したり、形式を整えたりするサポートも行います。出版が完了したら、査読者を見つけてF1000Researchのプラットフォーム上でオープンな査読が行われるようにします。
Q2. F1000Researchとはなんですか?これはプレプリント・サーバーですか?それともジャーナルでしょうか?
A2. 両方とも言えますし、どちらとも違うものとも言えます。私たちは「オープンリサーチ・プラットフォーム」と呼んでいます。プレプリントのコンセプトは、論文をジャーナルへ投稿する前にサーバーへ上げる、というものです。しかしF1000Researchで論文を出版すれば、それ自体が出版とみなされます。つまり、もう他のジャーナルへ投稿する必要はないのです。また、ジャーナルと異なる点は、F1000Researchで出版された論文はオープンな査読が可能になるところです。そして論文が査読されると、ScopusやPubMed、MEDLINEなどの書誌情報データベースにインデックスされます。
Q3. 論文掲載の採否を決定する編集者がいるのですか?
A3. 編集者はいません。完全に著者主導型のシステムです。これが従来の出版社との重要な違いです。最初の客観的なチェックを通過した論文はすべて出版されます。査読後、ひとりの意見がコミュニティの代表となってその論文の出版の可否や、その論文が査読で「合格」したかが決まる、ということにはならないようにしています。決めるのは著者なのです。査読結果に対して、いつ、どのように回答するのか、査読者のコメントを反映してバージョンをアップデートするのかを、著者の都合で決めるのです。
Q4. 査読はどのように行われるのですか?
A4. 論文が出版されてから査読者を選定します。それから査読者によるレポートや「承認」などの結果がプラットフォーム上で公開されます。従来のモデルとは異なり、査読者の名前とコメントも公表しますので、査読者としての仕事が認知され、そのコメントも引用可能となります。透明性の高い査読なのです。論文はすでに出版されているので、査読者が論文の「採択」「不採択」を決める必要はありません。ただ単純に、論文のクオリティを高めるための手助けなのです。ですので、査読コメントは非常に建設的なものが多い傾向にあります。
Q5. どのような組織でも筑波大学のようにF1000Research上で独自のス ペースをつくることができますか?
A5. そうです。大学、研究機関、財団、学会、学術コミュニティなど、あらゆる機関がF1000Researchでゲートウェイを開設することができます。研究成果を一か所にまとめ、研究者が迅速かつオープンに出版できるよう、多くのオプションを用意しています。F1000Researchと共同名義のゲートウェイをつくることも、ホワイトレーベルで独自のプラットフォームをつくることもできます。独自のプラットフォームの例として、ウェルカム財団の研究成果を出版するためにつくったWellcome Open Researchがあります。
Q6. F1000Researchではどのような種類の研究成果が出版されるのですか?
A6. あらゆる種類の研究成果を出版しています。従来型の研究論文や、期待される結果がでなかった実験結果、方法論に関する論文、ソフトウェア・ツール、データ記録など、さまざまです。また、白書や技術報告書、教材、ポスターといった査読を必要としない研究成果の出版もサポートしています。そのような成果物は通常は伝統的なジャーナルに載ることはないので、引用もできません。F1000Researchではすべての成果物に個別の識別子が与え、それらの被引用数などの評価項目を追跡することで、研究コミュニティでのコメントや議論を促します。
雑誌「ScienceTalks」の「オープンパブリケーション新時代がやってきた!筑波大学とF1000Reseachによるムーブメント」より転載。