THEのランキングメソドロジー:「世界大学評判調査」の重要性
- 大学ランキング日本語記事
- August 1, 2019
世界ランキングを上げるためには、ランキングシステムを理解する必要がある。そこで本項ではどのようにTHEのランキングシステムが機能しているかを説明する。大学ランキングを上げるのは長い道のりであり、取り掛かる前にいくつかの課題をこなすことが望ましい。THEのランキングシステムを理解すれば、あなたの大学の世界における競争力をより高めてくれるような短期的・長期的なアイデアが浮かんでくるかもしれない。
THEスコアの要素を理解する
THEの大学ランキングは、教育、研究、被引用論文、産業収入、国際の5つの指標によって決定される。最初の3つの要素は30%ずつで評価の90%を占める。それぞれの要素は複数の指標に基づいており、エルゼビア・スコーパス(世界最大級の抄録・引用文献データベース)を根拠にするものもある。
教育(30%):毎年THEによって行われるアンケートに基づいた「大学評判調査」のスコアは、教育スコアのうち50%を占める。在学生と収入に基づいたデータは大学側から提供される。
研究(30%):「大学評判調査」と大学独自のデータ、そしてスコーパスのデータを組み合わせたものである。研究による収入は、大学研究員の収入に基づいて申告される。研究の生産性は、大学によるデータとスコーパスのデータを統合したものである。
被引用論文(30%):被引用論文スコアはスコーパスにおける過去5年の論文被引用実績に基づいている。このスコアを向上するには学部のメンバーによるサポートが必要だが、運営側がスコアに影響を与えるような論文の発表策を取ることも可能だ。
国際的(7.5%):上記の3つに比べこのスコアのウエイトは軽いが、大学の国際性は、運営側が様々な国際的なイニシアチブを通して調整するのが簡単かもしれない。在学生のデータは大学側から提供される。
産業収入(2.5%):大学によって提供されたデータのみを使用して付けられるため、産業収入や大学職員をどのように定義づけるかがスコアに影響を与える。
我々がインタビューを行った大学は、THEに提出するデータの基本的な間違いを訂正したことでランキングが大きく向上したと語っていた。収入や学生数に関するデータは、どのように学生やスタッフ、そして留学生を定義づけて集計するのか、産業収入はどの範囲までを含めるのかといった点は大学によって異なり、そうした差異がランキングに影響を及ぼす。
いくつかの戦略は短期的なものであるが、ほとんどの指標には違いを産むための長期的な戦略と投資、そして努力が必要である。とりわけ研究に関する指標は学部のメンバーからの協力が必要であり、また大学の運営側が影響を与える部分も多い。
「大学評判調査」は研究と教育分野における大学の名声を図るものである。このスコアがトータルスコアのうち33%を占めている(ランキングメソドロジーにおいて最も大きな割合だ)。THEはあらゆる学問分野と所属の研究者を、ランダムに回答者として選出する。その数は20000人を超える。回答者は下記のような2つの基本的な質問への回答を求められる。
大学の創造性を図る基準としての「大学評判調査」
長い歴史と強いブランド力のある世界的に有名な大学が高いスコアを取りやすく、西洋の大学に比べ比較的歴史の浅いアジア圏の大学はスコアが低い傾向にある。しかし、選出できる大学に制約があるため、この調査は大学が自校をプロモートし、スコアを向上する機会を与えてもくれる。評価の高い大学は、国際的な共同研究や、外国人の学部メンバーや訪問研究員、そして留学生が多い。さらに国際学会で積極的に自身の研究を発表する研究員や、研究成果をPR活動によって国際的に公表する研究員も多いという傾向にある。多くの大学が世界中からインターンを招待し、いつか外国人研究員として帰ってきてほしいという期待を持ちながら口コミによる大学のプロモーションを行っている。
こうして調査回答者の中での評価を高めていくのである。ランキングを左右する方法は一つだけではない。様々なイニシアチブをとっていく必要があるのだ。
雑誌「ScienceTalks」の「韓国大学のロバストな革新」より転載。