植物を超える!?人工光合成の研究 持続可能な社会を地球規模で実現するために

東京工業大学 理学院 化学系 前田和彦教授

植物を超える!?人工光合成の研究 持続可能な社会を地球規模で実現するために

前編の内容とみどころ

植物が緑色に見えるのは、太陽光に含まれている様々な色の光のうち、植物は緑色以外の光を利用して光合成をしているため、残った緑色の光によって私たちは植物を緑と認識するからです。緑色の光は太陽光の中でも強い光なのですが、植物はそれを利用していません。いったいどうしてなのか?それはまだ明らかになっていませんが、もし、植物の利用できない光も利用して光合成をすることができれば、植物を超える光合成をおこなえる可能性があるのです。

残念ながら今の技術では植物の光合成を完全に模倣したものを作ることはできませんが、光合成を2つのパーツに分けて考え、それらを大胆に模倣すれば、ある程度、光合成を再現することができます。その2つのパーツとは、光を吸収するパーツと化学反応を行うパーツです。植物はこの2つの反応を複雑に組み合わせることでとても効率よく光合成をおこなっているので、人工的に再現する際にもこの2つの反応を適切に組み合わせることで人の手で光合成をおこなうことが可能になります。では、どれほどのレベルでそれが可能になっているのか?また、どのような物質を使い、光の吸収や化学反応を行うのか?その辺りはぜひ動画でご確認ください。

もし、この光合成を効率よく人工的に再現することができたら、水素やメタノールやエタノールなどを合成することができます。つまり、今とても問題になっている環境問題やエネルギー問題などを解決することができるかもしれないのです。

現在、人工光合成の研究はかなり進んできており、最近では100㎡の広い範囲に展開し、太陽光の光でどれだけ水素や酸素が出てくるかを調べるといった大規模な実証実験も行われています。今後、さらに持続可能な社会を目指すためには欠かせない研究であり、世界でも盛んに研究されてきているテーマです。これからの研究結果に目が離せない分野の1つであり、まずはこの動画から人工光合成への1歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

 

 

番組内容

この地球にはたくさんの植物や植物性プランクトンなどの葉緑体を持つ生き物が存在しており、彼らは光エネルギーを利用して光合成をおこなっています。そのおかげで私たち人間を含む多くの生き物がこの地球で生活することができているので、光合成はとても重要なプロセスであることは皆さんもご存知でしょう。では、そんな光合成を人間の手で再現することはできないのでしょうか?今回は東京工業大学理学院で人工的に光合成を再現し、さらには植物がおこなう光合成の効率よりも良いものを生み出そうと日々研究をされている前田和彦教授にお話を伺っていきます。もし、人の手によって光合成をおこなうことができれば、世界を救うかもしれない夢のような研究です。

 

前田 和彦(まえだ かずひこ)

東京工業大学 理学院化学系 教授

光化学、触媒化学、材料化学、電気化学を基盤として、水を分解して水素と酸素を製造する半導体光触媒、二酸化炭素固定化のための金属錯体/半導体ハイブリッド型光触媒、及びそれらに関連する化学を研究している。これにより太陽光の化学エネルギーへの高効率変換を目指す。

 

くもM LABとは?

くもM LABはサイエンスコミュニケーターであるくもMが様々な分野の研究者にお話を聞きに行くことで、研究者の皆様の生態を暴いていくバラエティー番組。どんな研究をしているのか?どうして研究者になったのか?など、研究者のあれこれを引き出していきます。

くもMプロフィール

大阪府立大学理学系研究科生物化学専攻。製菓会社に勤務後、『身近な科学を通じて、子供も大人も学びを遊びに』をモットーに、科学実験教室やサイエンスショーなどの活動を運営しています。

【TikTok】  https://www.tiktok.com/@science.kido
【Twitter】 https://twitter.com/science_kido
【科学ブログ】 https://www.science-kido.com/

Related post

チベットの研究を通して見えてきたもの

チベットの研究を通して見えてきたもの

自分自身のしたいことを貫いて進んできた井内先生だからこそ見える世界、今後、チベットの研究をより多くの方に知っていただく活動にもたくさん力を入れていくそうです。これまで歴史の研究について、そして、チベットのことあまり知らないという人にもぜひとも見ていただきたい内容です。
チベット史の空白を明らかにしたい 日本のチベット研究者

チベット史の空白を明らかにしたい 日本のチベット研究者

0世紀から13世紀頃までのチベットでは、サンスクリット語からチベット語に膨大な数の経典が翻訳され、様々なチベット独自の宗派が成立したことから「チベットのルネッサンス」と呼ばれますが、この時代について書かれている同時代史料がほとんどありません。この「チベット史の空白」を明らかにしようと、日々研究されている京都大学白眉センター特定准教授の井内真帆先生にお話を伺っていきます。
自由な環境を追い求め『閃』が切り開いた研究人生

自由な環境を追い求め『閃』が切り開いた研究人生

後編では、黒田先生がどうして研究者になったのか?どのような思いを持ち、日々研究されているのか?などの研究への愛について語ってもらっています。自由な研究環境を追い求め、自由な発想をされる黒田先生だからこそ、生まれる発見がそこにはありました。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *