女王アリの持つ、驚くべき能力の秘密について

甲南大学 理工学部 生物学科 細胞学研究室 後藤 彩子 准教授

女王アリの持つ、驚くべき能力の秘密について

前編の内容とみどころ

女王アリは他の昆虫に比べ、とても長生きですが、他にも驚くべき能力を持っています。それは、交尾によってオスから受け取った精子を何年も貯蔵することができるというものです。一般的な動物の精子は、射精されてからすぐにダメになってしまいますが、女王アリはどうやって精子を何年も劣化させることなく使い続けることができるのでしょうか。その秘密は女王アリが精子を溜めておく『受精嚢』にあったのです。甲南大学の後藤彩子先生はキイロシリアゲアリの女王アリの受精嚢を調べることで、その驚くべき能力の一端を解明しました。この秘密については、ぜひ、動画でお確かめください。

キイロシリアゲアリ

後藤先生が研究しているのはアリの精子嚢だけではありません。アリの中には、蛹になる時に繭を作る種と作らない種がいるのですが、先生はその繭の研究もしています。面白いことに、繭を作る種の中には、お尻の部分だけを切り取る種がいるのです。

お尻の部分だけが切り取られた繭

どうしてこのような不思議な行動をとるのでしょうか。実はそこには明確な理由があったのです。それはいったいどういうことなのか?後藤先生にお話いただいております。
図鑑を開けば、そこには詳しい説明がたくさん書かれており、もう人間が知らないことは無いのではないかと思うかもしれませんが、そんなことはありません。アリたちには、まだまだ誰も知らないような行動や不思議で溢れているのです。後藤先生はそんなアリたちを追い求め、彼らの謎を解き明かそうと、日々研究されています。後藤先生の語る魅力的なアリワールドにぜひ、触れてみてください。明日からアリをついつい追っかけてしまうこと間違いありません。

 

 

番組内容

アリの女王がどのくらい生きるか知っていますか?なんと、種類によっては10年以上、記録では29年も生きた種類がいるそうです。そして、彼女たちはその間、何年も何年も卵を産み続けるのです。また、さらに驚くべきことがあります。なんと、彼女たちは羽化した直後にしか交尾をしないのです。つまり、10年以上の長い年月を、最初にもらった精子だけで、ものすごい数の卵を産むということ。いったいどうしてそんなことが可能なのでしょうか。今回は昆虫シリーズ第4弾。甲南大学 理工学部 生物学科で、アリの研究者として、彼らの驚くべき能力について解き明かそうと日々、研究されている後藤彩子先生に、お話を伺っていきます。

 

 後藤 彩子(ごとう あやこ)

甲南大学 理工学部 生物学科 細胞学研究室 准教授

東京都立大学理学部生物学科を卒業後、東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻修士課程に進学。修了後は愛媛大学大学院連合農学研究科生物環境保全学博士課程で博士を取得。その後、自然科学研究機構基礎生物学研究所・特別協力研究員、同生理学研究所・専門研究職員を経たのち、日本学術振興会・特別研究員に採用される。2014年4月からは現職の甲南大学理工学部生物学科に着任し、ミクロレベルからアリたちの変わった能力を解明しようと日々研究している。

 

くもM LABとは?

くもM LABはサイエンスコミュニケーターであるくもMが様々な分野の研究者にお話を聞きに行くことで、研究者の皆様の生態を暴いていくバラエティー番組。どんな研究をしているのか?どうして研究者になったのか?など、研究者のあれこれを引き出していきます。

くもMプロフィール

大阪府立大学理学系研究科生物化学専攻。製菓会社に勤務後、『身近な科学を通じて、子供も大人も学びを遊びに』をモットーに、科学実験教室やサイエンスショーなどの活動を運営しています。

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