全てをまとめる司令塔/リサーチ・インパクトの「ファースト・レディ」

全てをまとめる司令塔/リサーチ・インパクトの「ファースト・レディ」

キングス・カレッジ・ロンドン REFデリバリー・ディレクター、ジョー・レイキーへのインタビュー

多様な経歴が付加価値を与える

キングス・カレッジ・ロンドンにはインパクト担当部署がない、とジョー・レイキー は説明する。ケーススタディの準備のために教員や学部と共同で仕事にあたる5人のインパクト担当者のチームを統括するのがレイキーだ。担当者たちは、関係者がインパクトを見逃さないようにするとともに、研修を企画し、有用なウェブサイトなどのリソースが活用される環境を整えるといった役割も担う。

チームのメンバーの経歴は、生物学から芸術、人文科学まで多種多様だ。PhDを持ちポスドク経験があるメンバーも2人いる。「博士号を持っていると学術面での信用が得られ、初めから研究者と同じ土俵に立てるのだと思います。」とレイキーは言う。それぞれの職務経験もまた、役に立っている。メンバーの1人はインパクトを追跡調査するためのソフトウェアを制作する会社に勤務しており、ケーススタディや研究の実証化に関する技術的側面について知り尽くしている。別のメンバーは、学内の資金調達部署に所属していたことがあり、研究の進捗に関して研究者と相談することについて経験豊富だ。さらに、サイエンス・コミュニケーターとして博物館に勤め、パブリック・エンゲージメントに関する多くの経験を積んだメンバーもいる。「私たちは専攻分野に基づいた採用はしません。少なくとも、専攻分野を採用基準に考えたことはありません。しかし、ある程度の研究支援の経験は必要です。」とレイキーは明言する。

 


 
「自分の研究にはインパクトがない」という態度を変革する

ブルーネル・ユニバーシティ・ロンドン(Brunel University London)在籍時、レイキーはREFのバイロット事業の一員だった。事業が終了してREF2014にインパクト評価が組み込まれることが決まった際、彼女と同僚たちは、関係者に対してインパクト評価の教育を行うために多くの時間を費やした。「その意味するところについて、誰も知りませんでした。」とレイキーは話す。「学内で何度も情報提供のためのセッションを開き、その度に別々の教員や学科、研究者に対して、インパクト評価とは何か、どんな意味があるのか、どんな仕組みなのかを説明しました。」

当初、レイキーが説明した相手のほぼ全員が、自分の研究にはインパクトなどなく、したがってケーススタディに供する材料にはならないと考えていた。「研究に関する議論を始めてからようやく、そこにはいくつかのインパクトがあることに気付きました。研究者たちは、インパクトという観点で研究を捉えていなかったのです。」とレイキーは述べる。また中には、自分たちの学問領域においてはインパクト測定は困難だとする研究者もいる。インパクトについて主体的に検討する必要性を研究者に理解してもらうよう努めることは、レイキーとチームメンバーが向き合わなければならない課題の1つだ。

 


 
インパクトの記録を残す

レイキーは、2013年に勤務していた教育機関で出会った1つのケーススタディについて次のように話す。その研究グループでは、プロジェクトの開始以来、研究のインパクトに関わるどんな書類もすべて保管していた。「ニュース記事や証明書、手紙、自分たちの研究が引用された政策文書、その他もろもろの大量の証拠書類です!おかげでケーススタディの取りまとめが容易になりました。物事の履歴を保管してくれるのはとても素晴らしいことですよ!」とレイキーは熱を込める。

逆に、研究にインパクトがあったことに研究者らが気づいていながら、何の記録も取られず一切のエビデンスが存在しない場面に遭遇したこともある。「論文が発表されてから、その研究がどんなインパクトをもたらしたのか、はっきりとは分かりません。でも私は、何かしらのインパクトはあったのだと強く確信しています。」とレイキーは話す。

 

プロフィール

ジョー・レイキー 

キングス・カレッジ・ロンドン REFデリバリー・ディレクター

REFの提出書類を全て完璧に仕上げ、かつ締め切りに間に合うよう万全を期すのがジョーの職務である。2010年にロンドンのUCL インスティテュート・オブ・エデュケーションで高等教育管理のMBA課程を修了しており、この17年間で高等教育、中でもリサーチ・インパクトに関する広範な経験を積んできた。およそ3年間、ブルーネル・ユニバーシティ・ロンドンでリサーチ・インパクト・マネージャーを務めた彼女は、自身の認識ではイギリスの大学における初のインパクト・マネージャーであり、REFの全国展開へと繋がるパイロット事業にも参加した。専門領域は調査研究、高等教育の政策とガバナンス、教育機関の管理、スタッフの育成、データ分析である。


雑誌「ScienceTalks」の「インパクト評価へ向け活気づく取り組み REF 2014から大学が得たものとは」より転載。

Related post

信頼されるアドバイザー/経験と専門知識をもとにバース大学に変革をもたらす

信頼されるアドバイザー/経験と専門知識をもとにバース大学に変革をもたらす

バース大学 リサーチ・インフォメーション/インパクト部長 ケイティ・マッケンへのインタビュー
2人の戦士/LSEにインパクト意識と文化の変革をもたらす取り組み

2人の戦士/LSEにインパクト意識と文化の変革をもたらす取り組み

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス リサーチ・インパクト・マネージャー、レイチェル・ミドルマスとインパクト・サポート・マネージャー、キーラン・ブーラックへのインタビュー
全てをまとめる司令塔/リサーチ・インパクトの「ファースト・レディ」

全てをまとめる司令塔/リサーチ・インパクトの「ファースト・レディ」

キングス・カレッジ・ロンドン REFデリバリー・ディレクター、ジョー・レイキーへのインタビュー

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *